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人事のための「お金」の学び(小橋一輝)

3層で採用コストを「見える化」〜1人採るのにいくらかかる?〜

人事の仕事(採用・定着・育成など)は、「会社のお金をどう使うか?」を考えることでもあります。人事に求められる会社のお金に関する知識や考え方を解説します。(2026年6月9日)

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「採用費」だけが採用コストではない

 前回は、粗利を増やすことが賃上げ原資を生み出す鍵だとお伝えしました。今回は視点を変えて、すでに支出している人件費関連コストの中に「見直せる余地がないか?」を探ります。
 その筆頭となるのが「採用コスト」です。

 多くの企業では、採用にかかるコストを求人広告費や人材紹介会社への手数料といった、請求書として届く費用だけで把握しています。しかし実際には、採用活動にはそれ以外にも多くのコストが発生しています。
 それらを含めた採用の真のコストを把握していなければ、人件費の最適化はいつまでも感覚頼りになってしまいます。

 採用コストは大きく次の3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。それが「直接費用」「間接費用」「離職・再採用コスト」の3層です。それぞれを順に見ていきましょう。





【第1層】直接費用—請求書で見えているコスト
 最も把握しやすいのが、採用活動に直接かかる外部費用です。求人サイトへの掲載費用、人材紹介会社への紹介手数料、合同説明会への参加費、採用パンフレットや会社案内の制作費などが該当します。
 
 中小企業では、1人採用するための直接費用が数十万円から、幹部クラスや専門職では100万円を超えるケースも珍しくありません。まずはこの数字を、採用人数で割って「1人あたりの直接採用費」として把握することが出発点です。


【第2層】間接費用—社内の「見えないコスト」
 見落とされがちなのが、採用活動に費やす社内の人件費です。求人票の作成、応募者との連絡対応、書類選考、面接の実施、内定後のフォローなど、これらすべてに担当者の時間が使われています。

 仮に、採用担当者が月に20時間を採用業務に充てているとします。その担当者の時給換算の人件費が3,000円であれば、月6万円、年間72万円が採用関連の間接コストとして発生している計算になります。さらに面接に参加する上司や経営者の時間も加算すると、実態はさらに大きくなります。

 加えて、入社後の研修・OJTにかかるコストも、間接費用に含めて考える必要があります。新入社員が独り立ちするまでの期間、指導する先輩社員の時間が割かれます。業種にもよりますが、一人前になるまでに3〜6カ月程度の育成期間を要するとすれば、その間の指導工数は決して小さくありません。


【第3層】離職・再採用コスト—最も高くつく「隠れコスト」
 採用コストの中で最も大きく、かつ最も見過ごされやすいのが、早期離職による再採用コストです。せっかく採用・育成した人材が短期間で離職すると、直接費用・間接費用をまるごと再度負担することになります。
 
 厚生労働省の調査によれば、入社3年以内の離職率は新卒採用で約30%、中途採用でも相当数に上ります。仮に採用から育成まで含めたコストが1人あたり100万円だとすると、3人採用して1人が早期離職すれば、その分の100万円はそのまま損失となります。

 採用コストの削減を考えるとき、「いかに安く採るか?」だけでなく「いかに定着させるか?」という視点が、実は最も費用対効果が高い施策になります。
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●文/小橋一輝(こばし かずき)
株式会社Elavis代表取締役、財務・金融コンサルタント、銀行取引アドバイザー
大学卒業後、地方銀行に入行。融資渉外担当として、多種多様な企業の創業から事業承継までのさまざまなステージをサポート。2019年に独立し、元銀行員としての豊富な経験を活かし、企業の資金調達や銀行取引の健全化などを支援。これまでに500社以上の企業、延べ1,000人以上の経営者・起業家・開業医を支援し、財務戦略の最適化をサポート。セミナー登壇・企業研修の実績多数。
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