■解説
「できない仕事」ではなく「できる仕事」を整理する
育児と仕事の両立には不安が伴います。Aさんも「急な休みで迷惑をかけるかもしれない」「時間内に終わらなかったらどうしよう」という不安を抱えている可能性があります。そのため、まずは本人と面談をして「何ができないのか?」ではなく、「どのような条件ならできるのか?」を確認することが大切です。
例えば、タイトな締切にならないように資料作成の流れをルール化したり、保育園からの急な呼び出しに対応できるように引き継ぎ方法を決めたりするなどの工夫で、Aさんが担当できる業務を広げるようにします。また、復帰直後から育休前と同じ役割を求めるのではなく、1カ月後、3カ月後、6カ月後と段階的に業務範囲を広げていく方法も有効です。
「配慮」と「特別扱い」を混同しない
短時間勤務制度は、働く時間を短くする制度です。仕事の責任や役割を軽くする制度ではありません。もちろん勤務時間や急な休みへの配慮は必要ですが、「責任のある仕事はしなくてよい」「面倒な仕事は免除される」ということではありません。BさんはAさんに対して「勤務時間には配慮する。ただし、その時間の中で責任と役割はしっかり果たしてもらう」といった考えを伝えておく必要があります。
特定の社員を特別扱いすれば、周囲の社員の不満につながります。一方で、事情のある社員への配慮が不足すれば、その社員は働き続けられなくなります。管理職には両者のバランスを取りながら、職場全体をマネジメントする役割が求められます。
復帰した人をフォローする人にも目を向ける
今回のケースではAさんだけではなく、AさんをフォローしているCさんへの対応も重要です。負担が偏っている状態を放置すると、「育児中の人だけが守られている」という不公平感が生まれます。管理職は「業務量の偏りがないか?」「残業が特定の社員に集中していないか?」を確認し、場合によっては業務の見直しや分担を行う必要があります。誰か1人の我慢で成り立つ職場は長続きしません。
企業にとって、仕事と育児・介護の両立を支援していくことはとても大切です。繰り返しになりますが、個人の事情に配慮することと、仕事上の責任を免除することは別の話です。管理職は、時短で働いている人に仕事を任せようとするときに、本人に「できない」と言われたら「できない理由」を聞くだけではなく、「どうすればできるか?」を本人と一緒に考えることが求められます。そして、育休から復帰した人だけでなく、復帰した人をフォローする人にも目を向け、公平性を考慮する必要があります。
●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。