<ストレス心理コンサルティング>
DVは、夫婦関係や恋愛関係のような親密な関係に現れる。DV夫は、社会的には誠実で、温厚な人と思われることが多い。翔太にもジキルとハイドのような二面性があるが、表面的には分からない。DVは、さまざまな問題が複雑に絡まっており、専門家のサポートを受ける必要がある。
DVにさらされた子供たち
麻美の長男は行動障害で、長女は摂食障害になっている。今後、さらに深刻な精神症状が起こる可能性もある。また、面前DVに加え、親が別居や離婚をするとさらにトラウマを抱えることになる。子供たちがトラウマを克服するには、できる限り安心できる生活環境が必要だ。まずはDVのない環境で、親との絆を育むことが何よりも大切である。また、子供同士が兄弟関係を築けるようにする必要もある。
DV夫は治るのか?
DV夫に人格障害や、アルコール依存やその他の精神疾患であれば、まずはその治療が優先される。DV加害者支援団体による更生プログラムがあり、暴力を防ぐための心理教育や認知行動療法などを行っている。加害者に自分を変えたいという基本的な欲求と、自分を客観視できる自己認知能力があれば、回復への道も開けてくる。
夫婦間暴力は、夫婦のコミュニケーション不全によるものという考え方もある。もしそうであれば、絡まった糸がほぐれるように元の関係に戻る可能性もある。あるいは、パートナーが変わることで暴力が出なくなることもある。
さまざまなリスクを想定
麻美は今後「どう生きていくか?」を考える際、さまざまなリスクを想定しておく必要がある。例えば、夫に離婚を切り出せば、逆上する可能性がある。そのとき、子供が一緒にいれば、暴力に巻き込まれる可能性もある。
また、仮に別居や離婚をしたとしても、夫がストーカー化して異常な行動をとることも考えられる。そして、今後さらにDVが長期化すれば、子供たちが思春期になって精神状態が悪化し、犯罪に走るリスクも出てくる。だからこそ、DVをよく知る弁護士や精神科医などの専門家に相談しながら、自分や子供の身の安全を考えて、行動することを忘れてはならない。
オキシトシンの影響?
幸せのホルモンと呼ばれるオキシトシンは、五感(触覚、味覚、視覚、聴覚、嗅覚)が刺激されることで分泌される。中でも有効なのが触覚で、肌の触れ合いによって多く分泌されるという。女性の場合は、出産時や産後の授乳時などだ。それは乳幼児との絆を守る働きをするが、同時に子供を守るために他人を排除しようとする働きもする。産後の麻美は、育児疲労とオキシトシンの働きから無意識的に翔太を避けていたのかもしれない。そして翔太は麻美に避けられていると感じ、負の感情を持った可能性もある。
※参考・引用文献
『DVにさらされる子どもたち 新訳版』ランディ・バンクロフトら著/金剛出版
『ドメスティック・バイオレンスと家族の病理』中村正/作品社
『なぜ夫は、愛する妻を殴るのか? バタラーの心理学』ドナルド・G・ダットンら著/作品社
『長続きするカップルには理由がある』スーザン・M・キャンベル/飛鳥新社
『発達障害と少年犯罪』田淵俊彦、NNNドキュメント取材班著/新潮社
●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。