相手の頭の中を整理する道具
仕事の場面でも同じです。
A「最近、現場がなかなか回らなくて…」
B「それって、人が足りていないということですか?」
A「いや、人はいるんですけど、指示が通らないというか」
B「それって、伝え方の問題ということですか?」
A「うーん、伝え方というより、そもそも話を聞くという空気がないのかもしれません」
B「それって、職場の雰囲気ということですか?」
A「そうですね。雰囲気がいいとは言えない職場かもしれません」
最初の一言と、最後の一言では、話の中身がまったく違います。Aさんが自分で、本当の困りごとに近づいていったのです。「それって」は、相手の頭の中を整理する道具でもあります。
ここで大事なのは、質問の質を上げようとしないことです。「いつからですか?」「どのあたりが難しいんですか?」など、いい質問は他にもあります。ただ、どれを使うか選ぼうとした瞬間、自分の頭の中が採点会場になります。それが会話を止めます。そして、質問を一生懸命考えれば考えるほど「話を聞いている」状態から離れて「興味を持っていない状態」になってしまいます。
だから、覚えるのは「それって」の4文字だけで十分です。どんな話にも刺さります。そして、問いの質は問わず、3回繰り返してください。机の下で、指を折って数えるのがおすすめです。
話すことよりも聞くこと
面白いのは、これをやると相手からの印象は上がるのに、やっている本人にはその実感がない、という点です。だから、やっていない人が多い。伸びしろの大きい技です。
ただ、立場が対等でない場面では、掘りすぎないでください。お客様や取引先の担当者などが相手の場合、「それって」を重ねすぎると「なぜ、そんなに私のことを聞くのか?」という不信感につながり、やがて違和感に代わります。そんなときは途中で、感情を乗せた相づちや表情でうなずき、「そうなんですね!」を挟むのがお勧めです。
今回のポイントは1つだけです。相手の答えに「それって」と3回返す。成功の定義は、折った指が3本。それだけです。うまくしゃべれたかどうかは関係ありません。初対面の人に好印象を持ってもらうためには、話すことよりも聞くことが大切です。
●文/桑山元(くわやま げん)
研修講師・お笑い芸人・俳優。早稲田大学教育学部を卒業後、大手損保会社に入社。新入社員代表として答辞を務める。入社2年目に資産運用担当者として1,000億円を運用。その後、メインバンク本店担当部署で法人営業を経験。同社を退社後、声優養成所を経て、時事ネタを得意とするコントグループ「ザ・ニュースペーパー」に19年間所属。2022年に退団し、芸人と研修講師の二刀流で活動スタート。会社員時代に培ったビジネススキル、お笑い芸人として磨いたコミュニケーションスキルとアドリブ力などを武器に、企業や自治体などで数多くの研修を実施。メディア出演・掲載実績多数。著書に『すぐ使える!おもしろい人の「ちょい足し」トーク&雑談術』(日本実業出版社)。キャリアコンサルタント(国家資格)、損保代理店資格(特級・一般)、ニュース時事能力検定(準2級)。