■相談
新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出て、私の会社も全員がリモートワークに移行されました。準備期間もなく突然のことだったので、管理職として戸惑ってばかりです。リモート会議をどう運営すればいいのか分からなかったり、パソコンの画面上では部下の表情がなかなか読み取れなかったり、そもそもどうコミュニケーションを図ればいいのか、見えない部下のマネジメントにストレスがたまりました。
非常事態宣言が解除されても、今後は、週に2〜3日出勤の交替制で、リモートワークとのハイブリッド形態をとるため、出社組と在宅組のメンバー間の温度差も気になります。ぜひ、他社でのリモートワークの成功事例など、具体的なアドバイスをいただければと思います。

■回答==========
昨年12月(第45回)の悩み相談室で、リモートワークについての相談があったばかりで、そのときはまだごく一部の企業で実施されていたので、私からの回答もリモートワークの意義や導入にあたっての心構え的な内容でした。まさか、それから数カ月後に、新型コロナウイルスによって、ここまで多くの企業がいや応なくリモートワークに移行するとは、想像すらできませんでした。
相談者の方のように、まったく準備期間もなく、いきなり新しい仕組みのリモートワークを実施したのですから、戸惑っても当たり前です。ただ、実際にやってみると、メリットを感じた方も少なからずいて、新型コロナウイルスという外的環境(外圧と言ってもいいと思います)があったからこそ、新しい時代に移行したとも言えますので、ぜひこのタイミングをポジティブに捉えていただければと思います。
いろんな企業の事例なども耳にし始めていたところなので、今回はなるべく具体的なケースでアドバイスしたいと思います。
まずは、前回もお伝えしましたが、リモートワークのマネジメントでは、
・時間ではなく、タスクを管理すること
・行動ではなく、結果を評価すること
を原理原則と思ってください。
だからこそ、細かく日常を監視するようなマイクロマネジメントではなく、思い切って権限委譲し、ポイントは押さえつつも、多くの部分を部下に任せていくマネジメントが求められます。
タスクを管理するためには、上司がきちんと部下のゴール(成果物や納期)について明確なイメージを持っておくことが前提になります。ゴールが曖昧なまま部下に仕事の指示を出すことは絶対に避けなくてはなりません。
さらに、最終ゴールや目標が大きなものであれば、それを小さな単位にブレイクダウンし、途中段階のマイルストーン(一里塚)ともいえる小ゴールを設定してあげてください。
行動というプロセスではなく、結果を評価するためにも、逆にプロセスでの関わり方が重視されます。部下からの報連相を待つよりも、上司のほうから「○○はどうなった?」「□□はもう済んだかな?」など、適度なタイミングで声をかけて、もし手間取っているようでしたら、早め早めに修正してあげるなど、効果的なアドバイスをお願いします。
これはマイクロマネジメント(細かく監視する)ではなく、部下の仕事がうまく進捗するように、権限委譲を前提としながらも、必要最小限のサポートをするということです。
>>>次ページにつづく
<会員サービスのご案内はコチラ>
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。