先日引退を発表したタレントの中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる問題で対応に追われるフジテレビが、連日マスメディアで取り沙汰され、大きなニュースになっています。同局に出稿しているスポンサー企業が次々とCM提供を停止するという経営を揺るがす大きな事態にまで発展しており、今も事態収拾のめどは立っていません。
CMを差し止めるというスポンサー企業の対応は、以前は考えられなかったことです。これは企業のコンプライアンス意識の高まりによるものと考えられます。コンプライアンスは法令順守だけでなく、社会的なルールを守ることも含まれています。企業倫理や公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務を行うということです。
近年、企業のコンプライアンスに対する意識の高さは、目に見える形で表れるようになってきています。記憶に新しいところでは、ジャニーズの性加害問題があげられます。問題が明らかになったとき、所属タレントとのスポンサー契約の終了を発表する企業が相次ぎました。
健全な経営に行うためには
フジテレビの問題でコンプライアンス以外に、もう1つ企業が問われていることがあります。コーポレートガバナンスです。「企業統治」と訳され、企業が健全に経営を行うための仕組みを指します。意思決定の透明性や公平性を確保して経営者の私物化を抑制したり、利害関係者(株主・取引先・顧客・従業員・地域社会など)の利益を守ったり、従業員の不正を防いだりするための仕組みやルールを設けることです。
ガバナンスの欠如は、企業としての統制や管理・運営体制がとれていないことになるので、不正や不祥事の温床となります。フジテレビの問題は、トラブルが社内のごく一部の人たちにしか共有されていなかったことが要因の1つに指摘されています。適切な情報開示と透明性は、ガバナンスの大切な要素です。
グリーンウォッシュ〜見せかけの環境配慮〜
「グリーンウォッシュ」という言葉があります。意味は、企業が商品やサービスなどのPRのために、環境やサステナビリティに配慮しているかのように見せかけることです。例えば、海外の飲食チェーンでプラスチックストローからリサイクル可能な紙ストローへの切り替えたものの、実際にはリサイクルされずに廃棄されていたことが発覚し、「グリーンウォッシュだ」と批判を浴びた問題がありました。
「グリーンウォッシュ」の問題で企業が考えなければならないことの1つは、事業活動が「本質を伴っているか」「形骸化していないか」を問うことです。これは社内制度の運用についてもよく言われることで、どんなにすばらしい制度を作っても機能していなければ意味がありません。
ガバナンスも同様で、策定したら機能させることが重要です。実効性を伴っていなければ、「仏作って魂入れず」になってしまいます。
●文/三宅航太
2004年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。同社がWebサイトで発信する「人の戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務に従事する。さまざまな記事の作成や数多くの企業を取材。