全国初、カスハラ防止条例を施行
4月1日、カスタマーハラスメント防止条例が東京都、北海道、群馬県で施行されました。カスハラは悪質な迷惑行為であり、就業環境を害するので禁じるものです。罰則は定められていません。カスハラに関する条例(地方自治体が制定し、その地方にだけ定められるもの)は全国初で、ほかにも条例制定に向けて検討している自治体があるようです。
条例制定の背景にあるのは、カスハラの社会問題化です。店の従業員や行政機関の職員などが、客や利用者から土下座を強要されたり、罵声を浴びせられたり、SNSで個人情報をさらされたりする事案が起きており、行政には対策が求められていました。国に先駆けて自治体が対策を打ち出しましたが、政府も企業にカスハラ対策を義務づける法律を作る方向で動いています。
すべての企業にカスハラ防止を義務づけ
3月、政府はすべての企業にカスタマーハラスメントの防止を義務づける労働施策総合推進法などの改正案を閣議決定しました(この後、改正案は国会に提出され、衆院・参院で可決されたら法律になる)。改正案には、企業に以下のような対応を義務づける内容が盛り込まれています。
・対応方針の明示やマニュアルの策定
・社内に相談窓口を設置する
・カスハラにあった場合の対応についての研修を行う…など
また、近年、就職活動中の学生へのセクハラが問題になっていますが、これについても防止の義務づけを盛り込んだ男女雇用機会均等法の改正案が閣議決定されました。カスハラ・就活セクハラの防止を盛り込んだ改正案は今後、国会での審議を経て、2026年に施行されることが見込まれます。
対策で、企業に求められることは?
カスハラ対策で重要なのは、企業としての方針や姿勢をはっきり示すことです。安心して働ける職場でなければ、従業員は能力を発揮できないばかりか、メンタルを病んだり、辞めてしまったりする可能性があります。
2023年9月、厚生労働省は心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正し、カスハラを加えました。同年10月、住宅メーカーに勤務していた20代男性の自殺が、カスハラなどで精神疾患を発症したことが原因の労災として認定されています。カスハラから従業員を守ることは、企業の存続や発展に関わっており、全社的な対応が必要と言えます。
<参考>
●【厚生労働省】カスタマーハラスメントを知っていますか?
●文/三宅航太
株式会社アイデム メディアソリューション事業本部 データリサーチチーム所属
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。