なぜ自転車に補助輪を付けるのか?
前回までのコラムで、「部下の成長段階に応じた育成のステップ」における育成の第1段階「教えるマネジメント」、第2段階「引き出すマネジメント」、第3段階「任せるマネジメント」について説明してきました。図4のように、縦軸の「上司の安心度」と横軸の「部下の自信度」は左下の「教える」領域から比例して右上の「任せる」の領域に進んでいきます。
今回のコラムでは、「教えるマネジメント」から「引き出すマネジメント」への移行のタイミングである「プロンプト(prompt)」と、「引き出すマネジメント」から「任せるマネジメント」への移行のタイミングである「フェイディング(fading)」についてお伝えしていきたいと思います(図4の2つの矢印のうち、最初の矢印が「プロンプト」、2つ目の矢印が「フェイディング」になります)。

この「プロンプト」と「フェイディング」ですが、行動分析学において使われる言葉で、「プロンプト」は、行動の遂行の直前や遂行中に提示される刺激であり、強化を受ける行動が起きやすいように手助けするものであると定義されています。分かりやすく言えば、「ある行動が起きやすいように補助してあげること」です。
そして、「フェイディング」とは、「その補助を外してあげること」です。
まずは、分かりやすい例え話で説明していきましょう。
子供の自転車に補助輪を付けるのはなぜでしょうか?
そもそも自転車に乗ったことのない子供が、補助輪のない自転車に乗ろうとしても、それは無理な話です。足をペダルに乗せた途端に転倒するのがおちでしょう。地面に頭でもぶつけられては大変です。大けがするかもしれません。けがはしないまでも、乗れないことから、自転車嫌いにならないとも限りません。それでは困ります。
補助輪は、安心・安全な状態で自転車に慣れてもらうために必要なものなのです。絶対に転倒しない状態で、「ああ、自転車に乗るのって楽しいな」と思ってもらい、自転車という乗り物になじんでもらうのです。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
連絡先:info@planet-5.com