自動車を運転しているときに、ほかの車の運転を見て「事故を起こすかもしれない」と思ったことがある人は少なくないだろう。危険な運転をする人というのは、どういう人なのだろう。
危険なドライバーたち
筆者は何度か、おかしなタクシードライバーに遭遇したことがある。ある日、タクシーに乗るとドライバーに「お客さん、お急ぎでしょ。だから信号は適当に無視します。安心してください」と言われた。タクシーは走り出すと、本当に信号を無視した。事故になったらと思うと恐ろしくなり、途中で降ろしてもらった。そもそも「急いでほしい」と言った覚えはなく、意味がわからなかった。
また、信号で停車するたびに助手席に置いたリンゴやオレンジを手にして、もう一方の手に握ったナイフで刺すタクシードライバーもいた。小声で「このヤロー、このヤロー」とつぶやきながら、果物にナイフを突き立てるのだ。怖くなって、すぐに降ろしてもらった。
年配のタクシードライバーで顔をフロントガラスに近づけ、ハンドルを胸につけて運転する人もいた。彼は、大声で「最近の若者は運転の仕方を知らないないからね〜。困ったものだ!」と言いながら運転していた。恐らくそのドライバーは加齢で視界がぼやけたり、視野が狭くなったりしていたのだろう。当然、これもすぐに降車した。
私が遭遇したおかしなドライバーたちは極端な例だが、いろいろな人がいることは事実だ。
交通事故を起こしやすい人
事故が起きる要因の1つに、ドライバー自身の性格特性や脳の機能低下がある。例えば、せっかちな人は交通事故を起こしやすいかもしれない。運転をしていて無理な追い越しをかけたり、信号無視をしたりして、事故の可能性を高めてしまうのだ。自己中心的な性格の人は、他の車や歩行者の動きが視界に入らず、事故を起こしやすいと言える。
また、いつも同じ道を走る人は注意する必要がある。同じ道なので「慣れ」(行動の無意識化)が出てしまい、危険の認知能力が低下するからだ。「この道はよく知っているから安全だ。だからスピードを出しても大丈夫」といった心理が働くことで、心理学的に「リスク補償行動」といわれるものだ。慢心は事故のもとである。
事故を起こす人の特徴に、過信がある。彼らは、自分は運転がうまいと思い込み、安全の確認や危険予測をしようとしないので、事故を起こしやすいのだ。認知バイアスの中に「ベテランバイアス」というものがある。自分は運転のベテランだから事故は起こさないという思い込みで、危険予知能力の低下につながる。
疲労を感じたら運転しない
精神的な疲労で、注意力や判断力が著しく低下することもある。疲れが激しいときは、運転をやめることだ。運転をしていて疲労を感じたら、車をドライブインや安全な脇道に止め、仮眠をとることだ。飲酒や睡眠不足による注意力の低下で、事故を起こす人も後を絶たない。
また、脳の空間認知に関連する「せつ前部」という部位が萎縮している人が、事故を起こしやすいことが分かっている。その部位は視覚イメージと記憶に関連していて、安全運転に欠かせない部位だ。加齢によって脳が白質病変し、脳の神経がダメージを受けている場合もある。こうした状態では、脳内の情報伝達速度が低下し、危険認知の遅れにつながってしまう。
事故を起こしやすい精神疾患
うつ病になると注意力や集中力が低下し、信号無視などのミスにつながりやすい。うつ気分を伴う適応障害でも同じだ。災害や事故・犯罪などに遭遇した後にPTSDになると、運転中にフラッシュバックが起こり、注意力が低下する恐れがある。
ほかにもパニック障害や突然睡魔に襲われるナルコレプシー(睡眠障害)、ADHD(発達障害)など、注意能力の欠如や低下が考えられる状態はある。その場合、軽い症状でも専門医を受診し、自動車を運転するときの注意点について聞いたほうがいいだろう。
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●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。