「桑山さんって、話すのが上手だから信頼されるんですよね」
これは研修後に受講した方からよく言っていただく言葉で、ありがたいことです。でも、私はそのたびに「いや、実は話が上手だからじゃないんです」と答えます。もちろん、話し方の技術はあります。でも、それ以上に大切なのは、「この人の話なら信用できそうだ」と感じてもらうことです。
私は企業研修講師、俳優、お笑い芸人という3つの仕事をしています。いずれの仕事も、信頼されることはとても大切です。例えば芸人の世界。ものすごく面白い話をしていても、お客様に「この人、話を盛ってるな」と思われた瞬間、笑いが少し減ります。逆に「この人、本当にこんなことがあったんだろうな」と思われる話は、不思議なくらいお客様が前のめりになります。
商談や会議の場でも同じです。相手に「この人、なんだか本当っぽい」という感覚を持ってもらえると、信頼の入口になります。
信頼される人の共通点
信頼される一番のポイントは、実は話し方よりも「反応の仕方」にあります。例えば、お客様から「最近、若手社員がすぐ辞めちゃうんですよ」という相談を受けたとします。ここで「それは職場の心理的安全性やエンゲージメントが低いのかもしれません。オンボーディングが必要ですね」と、必殺技を繰り出す格闘ゲームのように専門用語を連発してまくし立てたらどうなるでしょうか。相談した側からすると、「いや、まだそこまで聞いてないんだけど…」となることがあります。
信頼される人の返し方は違います。若手がすぐに辞めてしまうという相談を持ちかけられたら「何年目くらいで辞める方が多いんですか?」「辞めるとき、どんなことを話されていますか?」と、まず質問をします。
私は研修でよく「診断より先に問診をしてください」とお伝えしています。病院で椅子に座った瞬間、医師に「風邪ですね」と言われたら、ちょっと不安になりますよね(先生、まだ何も言ってません…)。そんな病院には、あまり通いたくありません。
ビジネスでの会話も同じです。相手は「答え」を求めているようでいて、実は「理解」を求めていることが少なくありません。
話を盛らず、細部を表現する
もう1つ、信頼される秘訣があります。それは自分が話すときに話を盛らず、細部を表現することです。芸人時代、先輩から「笑わせようとして話を盛るな。細かいところをリアルに話した方が笑いになる」と教わりました。例えば、「駅の階段で一番下の段まで転げ落ちました」より、「駅の階段で、コーヒーだけが先にゴールしました」の方が情景が浮かびませんか。
例えば、セミナーが終わった後、講師に「全員が感動しました」と伝えるより、「アンケートには『明日から一つ試してみます』という声が多くありました」と伝える方が、ずっと信じてもらえます。人は大きな言葉より、小さな事実を信用するものです(ちょっと脱線しますが、面白さも「大きくすること」ではなく、「具体的にすること」から生まれます)。
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●文/桑山元(くわやま げん)
研修講師・お笑い芸人・俳優。早稲田大学教育学部を卒業後、大手損保会社に入社。新入社員代表として答辞を務める。入社2年目に資産運用担当者として1,000億円を運用。その後、メインバンク本店担当部署で法人営業を経験。同社を退社後、声優養成所を経て、時事ネタを得意とするコントグループ「ザ・ニュースペーパー」に19年間所属。2022年に退団し、芸人と研修講師の二刀流で活動スタート。会社員時代に培ったビジネススキル、お笑い芸人として磨いたコミュニケーションスキルとアドリブ力などを武器に、企業や自治体などで数多くの研修を実施。メディア出演・掲載実績多数。著書に『すぐ使える!おもしろい人の「ちょい足し」トーク&雑談術』(日本実業出版社)。キャリアコンサルタント(国家資格)、損保代理店資格(特級・一般)、ニュース時事能力検定(準2級)。