毎年7月1日から1週間は「全国安全週間」です。安全というと製造業や建設業を思い浮かべる人も多いかもしれません。ですが、病院でも安全管理は患者や職員の命を守るために欠かせません。
安全対策は、マニュアルを作るだけでは十分ではありません。長年事故が起きない状態が続くと、「これくらいなら大丈夫」「今まで問題なかったから」という気持ちが生まれ、決められたルールが守られなくなることがあります。今回は、感染症対策を軽視するようになったベテラン看護師への対応について考えてみましょう。
■今回の事例
総合病院に勤務する看護師Aさんは、勤務20年のベテランです。病院では、新型コロナウイルス感染症の患者への対応について、「一般患者の対応を終えてから最後に対応すること」「個人用防護具(PPE)を着用し、対応後は手指消毒を徹底すること」というルールが定められています。
しかし最近のAさんは「最近は感染者も少ないから、そこまで神経質にならなくても大丈夫」「毎回、防護具を全部着けると時間がかかる」と言って、一般患者への対応途中で感染患者に対応したり、防護具の着用を省略したりしています。その様子を見た若手職員の中には「ベテランの先輩がやっているなら問題ないのだろう」と考え、同じような行動を取り始める人も出てきました。Aさんに対しては、病院や看護師長はどのように対応すればよいのでしょうか?
■解説
職場の方針として感染症対策を明確にし、衛生管理体制を維持する
感染症対策は、患者や職員を守るための病院全体のルールです。ルールの運用について、個人の経験や勘に任せるものではありません。管理者は「忙しいから」「ベテランだから」と例外を認めるのではなく、全職員が同じ基準で実施するものであることを、あらためて周知する必要があります。
また、ルール違反が見られた場合は個人を責めるのではなく、「患者と職員の安全を守るため」という目的を共有しながら、改善を求めることが大切です。管理者自身が率先してルールを守り、安全を最優先にする姿勢を示すことで、職場全体の安全文化を育てることにつながります。
同じ行動を繰り返していると自動化される
安全管理で最も注意したいのは、「慣れ」です。事故や感染が起きない期間が長く続くと「今まで大丈夫だったから問題は起きない」という思い込みが生まれ、安全行動が省略されやすくなります。人は、同じような状況で同じ判断・対応を繰り返していると、次第にその判断の過程を省略し、「刺激→判断→行動」の流れが自動的に働くようになります。
今回の例で言えば、Aさんは患者対応で安全管理のために「一般患者か、感染症患者か」を確認するように言われていても、一般患者であることが続くと「確認作業をしなくてもよいのでは?」と思うようになります。
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●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。