【第30回】見た目の工夫で印象を変える「ラベリング効果」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
ラベリング効果とは?
ラベリング効果とは、ある人や事柄のごく一部を見ただけで、そのごく一部分が表現されるような名称を与え、それがその人や事柄の全てであると決めつけることをいいます。良くラベリングされれば問題ありませんが、悪くラベリングされると正当に評価してもらうのは非常に困難になります。
●解説
中学生のとき、クラス替えの初日に遅刻した友人がいました。彼はそれから「遅刻王」のラベルを貼られたのです。いままでそんなに遅刻するタイプではありませんでした。ただ初日で《よく遅刻をする、だらしない奴》という印象を持たれてしまったのです。
ラベリングされた人は、そのラベルの行動を強化していく傾向があります。3カ月もしないうちに彼は本当に「遅刻王」になってしまったのです。
会社や家庭でも、その人のマイナスの部分、できない部分だけを見て「駄目な人」と決めつけてしまうことはないでしょうか?
周りの評価により、本人はますます自信をなくし、本当はデキるのにデキない人になってしまう。これをラベリング効果といいます。
ラベリング効果を営業活動に有効に利用してみましょう。
お客さまと商談中のときのことです。一生懸命考えた提案書を広げ、プレゼンしました。お客さまは真剣に検討してくれています。そのときふと隣に置いてあるライバル会社の資料が目に入りました。
私「そちらの資料は?」
お客さま「これは、○○ホームさんのですよ」
中身までは見せてもらいませんでしたが、その提案書は豪華でした。立派な表紙つきで一冊の本のようです。いい提案が入っているように感じました。それに対して私の提案書は数枚の資料をペラペラの表紙にホチキスでとめただけの、いかにもお粗末なものです。
《中身までお粗末と思われてしまう》と思った私は、「今見ていただいているのはたたき台です」と言って後日再提出させてもらうことにしたのです。
何かいいものはないかと探し回っていると、以前、資料管理用に買っておいたA3のクリアファイルが目に入りました。さっそく資料を入れてみました。
すると、われながらとても豪華でいい提案書に変身したように感じ、提出する前に気合が入りました。その後、この商談はうまくいき、無事に契約まで進めることができました。
《提案は中身が勝負!》という方もいるかもしれません。しかし、《たいした提案じゃない》と思って見るのと《これはきっといい提案だぞ》と思われるのでは天と地ほども結果は違ってくるのです。
提案書の中身は真剣に考えます。その上で見た目にも工夫してください。ほんのひと手間でいいものだと思ってもらえます。ラベリング効果はお客さまにいい印象を与え、その上自分自身もテンションが上がり双方に良い効果があります。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業コンサルタントと大学で学生に向け【営業の授業】をしている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。
http://www.tuki1.net/
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