■相談
私の会社では今年度からリモートワーク制度(※)が導入されました。週に2日は出社の義務があるのですが、その出社日さえもコアタイムのないフレックス制度なので、基本的に時間管理は自己申告制です。成果重視の評価体系であるので、どこにいようが成果さえ出してくれれば問題はないのですが、部下が日常的に目の前にいないことになり、上司としてどう管理していいのか戸惑っています。
会社からはガイドラインのようなものが提示されてはいますが、うまく運用できているとは思えません。本当に部下が働いているのかどうか、部下の行動が気になって仕方ないのです。どうしたらいいでしょうか?
(※)会社に出社せず、自宅や自由な場所で仕事をする働き方のこと
■回答==========
リモートワーク制度が導入されているとのことですが、質問者の悩みに回答する前に、まずは企業と個人にとって導入するメリットが何かを整理しておきましょう。
大きく以下の2つがあげられます。
・時間の有効活用
・優秀な人材の確保
1つ目の「時間の有効活用」ですが、国が進める「働き方改革」の流れにも沿った考え方で、通勤時間をなくすことで、生産性を向上させることができます。特に会社にいる必要のない業務については、どこにいようが仕事が可能なわけで、そもそも通勤に費やす時間をなくすと同時に、そのための肉体的な疲労も軽減できるわけですから、生産性は向上するはずです。
また、待ち時間や隙間時間というものを、プライベートな時間に充てることもできます。オフィスにいるよりも家族と過ごす時間を多く持てますし、子供の送り迎えや洗濯・料理といった家事も、やりくりが可能になります。
2つ目の「優秀な人材の確保」については、採用できる人材の幅が広がるということです。勤務地の関係で通勤に時間がかかりすぎるため、ぜひ採用したい人材にもかかわらず、個人的な事情で入社を辞退されたというのはよく聞く話です。
育休明けの社員にとっては、時短勤務よりもはるかに望ましい制度ですから、子育てとの両立が難しく、泣く泣く会社を辞めざるを得なかったという人にとっては、非常にありがたい制度です。また、親の介護の問題は、これから多くの働き手が直面することになります。この制度があれば、そういうことにも柔軟に対応が可能になります。
つまり、この制度のおかげで、優秀な人材の流出も防ぐことができるというわけです。
まずはあなた自身が以上のようなメリットを十分に理解することが重要です。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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