■相談
最近、転職をした者です。辞めた会社では、管理職を務めており、部下がいる上司の立場で辞めてしまいました。辞めた理由は、どうしても以前からやりたかった仕事に就けるチャンスがあり、思い切って別の業界に転身したのです。
辞めることを前職の部下たちに伝えたところ、何人かの部下から「来期も一緒に仕事できると思っていたのに、ショックです」「なんだか裏切られた気がしました」という率直な気持ちを伝えられました。予想したことではあるものの、自分自身でもなかなか消化できずにおります。新しい仕事については、前向きに取り組んでいるのですが、そのことだけが小骨のように突き刺さった状態です。
どう伝えればよかったのか、そもそもどうすべきだったのか、マネジメント相談室に相談する内容なのかどうかも分かりませんが、よろしくお願いいたします。
■回答==========
確かに、部下マネジメントに関する通常の「マネジメント相談室」とは異なる性質の相談ですね。ただ、こういう悩みを抱えている方は実際に少なくないと思いましたし、このような内容は意外に相談する相手もいないのでは…と思い、あえて取り上げさせていただくことにしました。
まず相談者の方にお伝えしたいのは、「人は誰もが自分の幸福を追求する権利がある」ということです。そして、あなたにとって今回の転職は、間違いなくあなた自身の幸福を追求した結果の決断だったと思われます。
「そもそもどうすればよかったのか」と書かれていますが、読み方によっては、「転職すべきではなかったのでは?」というニュアンスも含まれているように聞こえます。しかし、あなた自身の「どうしても以前からやりたかった仕事に就けるチャンス」を、部下のために諦めるということは、本当に自分自身で納得できる生き方なのでしょうか。
部下の立場になって考えると、上司であるあなたから転職することを伝えられた直後には、「寂しかったり、ショックだったり」という気持ちも理解できないわけではありません。しかし、冷静になって考えれば、一時的な感情で一人の人間(たとえ上司であっても、一人の人間にすぎません)の可能性を閉ざすことは本意ではないはずです。また、仮に「部下のために自分の夢を諦めた」というようなことを押し付けられたとしたら、そのほうがかえって迷惑な話になってしまいます。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。