近畿タクシー株式会社/新提案の観光タクシーで感動を創出 地域の公共交通機関の新発想
近畿タクシー株式会社の打ち出す観光プランはお客さまへのサービスだが、自社や提携先の従業員に対して教育的な効果があるという。(取材・文・写真/水崎真智子)
旅の楽しみはタクシーに乗ったときから
観光都市はタクシー会社間の競争が激しく、各社がしのぎを削っている。そんな中、関西有数の観光都市である兵庫県・神戸で、新しい企画を次々に繰り出すことで注目を集めているタクシー会社がある。近畿タクシー株式会社だ。
同社は、観光プランとして「神戸スイーツタクシー」「神戸ビーフタクシー」「銀幕タクシー」「六甲オルゴールタクシー」といったネーミングを打ち出し、新しい神戸の魅力をアピールしたサービスを提案している。同社の代表取締役社長、森崎清登さんはこう話す。
「洋菓子や神戸ビーフ、日本酒、老舗温泉など、神戸には自慢できる企業や店舗がたくさんあります。サービスを提供していただける企業としっかり手を組み、単なる移動手段としてのタクシーではなく、乗車していただいた瞬間から目的地に至るまで、つながりのある旅程としてのプランをお客さまに提案しています」
この仕事をしていてよかった
「神戸スイーツタクシー」は、神戸の洋菓子店と海と山の観光スポットを2時間で巡るプランで、1台4人まで利用できる。提携の老舗洋菓子店では、お値打ちで楽しい限定メニューが楽しめる。
例えば、神戸洋藝菓子ボックサン三宮店では、ケーキ3個のプレートを500円で提供している。女性のグループが異なるケーキを注文し、12種類のケーキを分け合い味わう光景がよく見られるという。ケーキの皿には、「○○様」と名前が書かれたチョコレートプレートが乗っている。
これも、遠方からの来訪者たちをいっそう感動させる。予約申込時に分かるのは代表者の名前だけなので、乗車後、運転手が会話の中でさりげなく連れの人たちの名前を聞き、店に伝えるという。
こうしたサービスは、思わぬ効果を生んでいる。名前入りのプレートは、誕生日ケーキなどに添えるもので決して珍しいものではない。職人にとって名前を書くことは、日常の業務の1つだ。それが、店舗のカフェで「幸せ」といって感動するお客さまを目にする。「これ、あなたが書いたの。ありがとう」と直接、お客さまから感謝の言葉をもらうこともある。
その体験は、ケーキ職人として仕事をしていく上で、大切なことの再確認になったという。朝礼で、「社員からこのような発言があった」と洋菓子企業の社長から連絡を受けた森崎さんは、観光プランはお客さまへのサービスだけでなく、人材育成面でも効果があることを感じたという。
代表取締役社長 森崎清登さん
自社のドライバーたちにも、同じようなことがあった。観光プランの企画で、多くの企業や店舗にあいさつや打ち合わせに出向く。そのことによって、ドライバーの仕事が単にお客さまを運ぶことで完結するのではなく、さまざまなつながりの中で働けていることを自覚し、やりがいや責任感の向上につながっているという。
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●近畿タクシー株式会社
所在地/兵庫県神戸市長田区上池田5-5-18
創立/1952年7月
従業員数/70人
資本金/1000万円
年商/2億7000万円(2012年10月期)
事業内容/バス・タクシーサービス事業/指定訪問介護事業
ホームページ/ http://www.kinkitaxi.com
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