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近年、注目されているデジタルトランスフォーメーション(DX)について、言葉の定義から企業としての取り組み方まで、わかりやすく解説します。(2022年3月15日)
これまで11回にわたってデジタルトランスフォーメーション(DX)についてご紹介してきました。最終回となる今回は、あらためて全体像を見渡しておきましょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉に振り回されない
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉の意味するものは「何か?」を頑張って理解する必要はありません(第1回)。
事業の本質とは新たな価値を生み出すこと(価値創造)ですから、そこに集中すべきです。ただ、新たな価値を生み出すのに、デジタルを活用することは無視できない時代となりました。
今、私たちは「電気があること」を当然のこととして事業を営んでいます。電気を使わずに人力で作業を行っている企業はないでしょう。それと同様に、コンピューターやインターネット、スマートフォンが浸透している現代において、「デジタルを活用すること」はすでに前提条件になりつつあります。
(第6回資料より)
それは単にデジタルを活用するということだけでなく、ビジネスモデルや組織構造・業務プロセス・制度など、事業そのものを根本から再設計するほどの変化となります。そのため、デジタルトランスフォーメーション(変革)と言われるのです。
ただ、難しく考え過ぎるのはやめましょう。大きな変革を伴わない「ちょっとしたIT活用(自動化や効率化)はDXではない」という声を聞くことがあります。しかし、そのような声は無視して結構です。
上述のとおり、価値創造することが事業の本質なので、単なる「IT活用か? それともDXか?」はどちらでもよいのです。顧客や市場、社会の変化に対応して「自社が変化できているか?」こそが本質です。そして、DX事例として紹介されているような企業は、最初は小さな取り組み(IT活用)から始めていることを付け加えておきます。
デジタルを活用することで得られる効果
電気を使うことによって得られる効果は、多くの人がイメージできるでしょう。しかし、デジタル活用で得られる効果は、そう単純ではなくなります。代表的には、以下のようなものがあげられます。
(1)人の作業・手間が減る(ヒューマンエラーが減る)
(2)ペーパーレス(紙・ハンコなし)の実現
(3)働く場所・時間を問わなくなる(テレワーク・リモートワークの実現)
(4)情報共有・データ連携の迅速化
一例を考えてみましょう。「日本はデジタル活用が遅れたことによって、新型コロナウイルスへの対応が遅れた」とよく言われます。これは上記の(1)(2)、さらには(4)の恩恵が受けられなかったためです。
病院の人・設備・病床などのリソース状況がリアルタイムに共有されないために、救急車は患者を乗せたまま、路頭に迷うことになりました。空き状況を紙書類に手書きし、電話で情報交換をしていたら、リアルタイムに情報共有できないのは当然です。また、保健所は患者情報を入力するだけで手いっぱいになったそうです。これもマイナンバーや病院カルテの情報をデジタルデータとして共有する仕組みがなかったための悲劇と言えます。
デジタル活用の結果、上記(1)〜(4)の効果により、「圧倒的なスピード」が得られると言えます。VUCAの時代(第7回)には周囲の環境に合わせて素早く変化するスピードが求められます。
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●文/渋屋隆一(しぶや りゅういち)
中小企業診断士、情報処理技術者。大学卒業後、IT企業にてエンジニア・商品企画を担当。2015年独立。ITとデータを活用した「売れ続ける仕組みづくり」「業務改善」「働き方改革」を得意としている。コンサルティングや研修・セミナーを通じて、中小企業の経営支援を行う。著書に『コレ1枚でわかる最新ITトレンド』(技術評論社)、『社長はデータをこう活かせ!』(日本実業出版社)など。
Webサイト: https://100athlon.com
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