多くの人は自分の話を聞いてもらいたいと思っています。ただ、プライベートを含め、しっかり耳を傾けてもらえるケースは少ないのが実情。例えば、話をしている相手がパソコンで作業をしながら聞いていたり、プライベートのシーンで家族や友人がスマホやテレビを見ながら聞いていたりしたら、話し手は「聞かれていない」と思います。それが繰り返されると、相手はコミュニケーションを取ることをやめてしまいます。
傾聴の大切さは、書籍や研修など、さまざまな場面で学んでいる方は多いかと思います。ただ、頭では理解できていても、実際に行動に移すことができている人は少数派です。
なぜなら、「聞く」ことは、「話す」ことよりも容易に行えるからです。人は1分間に150程度の単語を話せますが、聞くことはその約5倍認識できると言われています。それゆえ話を聞きながら他のことを考えたり、別の行動をしてしまいがちになるのです。
5分間100%耳を傾ける
また、人手不足の状況の中、多くの業務を抱えながら仕事をしているケースが多いので、話を聞くことよりも、目の前の作業をこなすことに意識が向きがちになります。そして、ついつい「ながら聞き」をしてしまうのです。致し方ないとも言えますが、職場であれば部下の話の多くは報告と連絡なので、たいてい2分程度で済みます。受け答えをしたとしても5分で終わります。
長時間、相手の話を聞くとなると、時間が作れないので無理と思う方もいるかと思いますが、短い時間でよいとなるとハードルが下がりませんか?
まずは5分間、100%部下の話に耳を傾け、『全身で聞く』ことを意識しましょう。具体的に言えば、他に作業をしていたとしても手を止め、顔や体を相手に向けて聞くことだけに集中するということです。もし、どうしても手が放せない業務をしているときに、スタッフが話しかけてきた場合は、事情を説明して、いつであれば「聞けるのか」を伝えてその後に対応しましょう。
「聞き上手」になるための技術
話を聞いているときは、相手が話をしやすい態度、表情を意識してください。腕組み、足組みをしたり、頬づえをついたり、のけぞって高圧的に見えるような態度を取るのは厳禁です。腕組みは相手の前に防御バリアを作り、「あなたの話は受け入れません」と無言で伝えていると受け取られるので要注意です。腕を組むことが癖になっている人は意識してやめるようにしましょう。
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。