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事例で考える困ったときのマネジメント対応/山田真由子

第18回「健康診断の受診を拒否されたら」

働き方や価値観が多様化する中、マネジメントは個別対応が求められています。さまざまな事例から、マネジャーに求められる対応を解説します。(2025年9月16日)

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 会社は労働安全衛生法第66条に基づき、従業員に対して健康診断を実施する義務があります。従業員数が50人未満の中小企業であっても「雇入時健康診断」「定期健康診断」は必須です。これは、従業員の健康状態を把握して疾病の早期発見・予防につなげると同時に、会社にとっては労災防止や安全配慮義務を果たすための重要な仕組みとなっています。

 特に建設業や製造業などの危険を伴う現場では、元請けが下請けの作業員の健康状態を確認することを条件としていることが多く、健康診断を受けなければ現場に入れません。そのため、従業員個人の判断で拒否されると、会社の業務そのものが立ち行かなくなるリスクがあります。





■今回の事例
 毎年、ある建設業の下請け会社では定期健康診断を実施しています。ところが、A係長(30代男性)の部下であるBさん(20代男性)が「健康診断の結果は個人情報であり、会社に知られたくないので受けたくない」と強く拒否しました。

 元請けからは「健康診断結果の提出がなければ現場に入れない」と言われており、このままでは仕事に就けないため、業務にも支障が出かねません。困り果てたA係長は「どう説明すればBさんに納得してもらえるのか」悩んでいます。
 

■解説
 健康診断の結果は確かに「個人情報」にあたります。従業員からすれば、「病歴や数値が会社に知られることへの抵抗感」があるのは自然な感覚かもしれません。しかし、労働安全衛生法に基づく健康診断は、会社の実施義務であると同時に、従業員の受診義務でもあります。従業員が一方的に「受けない」と決められるものではなく、拒否し続ければ就業に制限がかかることは避けられません。
 上司としては「会社の決まりだから」と押し付けるのではなく、部下の不安や誤解を受け止めつつ、次のような観点で説明を行うことが効果的です。

・法的根拠を示して説得する
 「これは会社の都合ではなく、法律で定められた義務である」と伝えることが重要です。特に建設現場での作業は、健康診断を受けなければ元請けから入場を認められず、結果として「仕事自体ができない」という具体的な不利益が生じることを説明しましょう。

・個人情報の取り扱いに配慮を示す
 健康診断の結果は会社全体に開示されるわけではなく、産業医や総務など限られた人しか取り扱えません。また、元請けに提出する場合でも必要な範囲にとどめられることを補足し、「不必要に情報が拡散されることはない」と伝え、安心して受けてもらえるようにすることが大切です。
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●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。
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