■相談
経理業務を担当する部署の課長です。現在、ルーティン業務といわれる“こなさなければならない”業務が山積みです。本来は、システム化やペーパーレス化などの効率化を推進する取り組みに注力していくべきなのですが、目の前の仕事に忙殺されて、ついつい重要な課題解決が先送りされてしまっています。
部下も業務過多になっているからか、最近ではミスが頻発する傾向もあり、部下に対する業務の優先順位付けにも頭を痛めています。いいアドバイスがあればぜひお願いいたします。
■回答==========
目の前の仕事にアップアップしてしまい、本来やるべき仕事が後回しにされるというのは、どの職場でも起こりがちな現象です。
ただ、どこかで踏ん張って重要な案件に手をつけないと、根本的な課題が解決されず、さらに目の前の仕事が増えていくという悪循環に陥ることにもなりかねません。
たとえば、図1のような考え方で仕事を整理することができます。
縦軸を重要度、横軸を緊急度と設定し、上に行けば行くほど重要度の高いもの、右に行けば行くほど緊急度が高いとします。
ここで4つの象限ができるわけですが、
Aは、重要度も緊急度も高い
Bは、緊急度は低いが、重要度は高い
Cは、重要度は低いが、緊急度は高い
Dは、重要度も緊急度も低い
に分けられます。
誰が考えても、今の時点で優先すべきはAです。次はCという順番にならざるを得ません。緊急度の高いものを、いくら重要度が低いといっても、先送りするわけにはいかないからです。当然、Bの仕事は後回しにされていきます。
しかし、中長期的に考えると、注目すべきは間違いなくBの象限に存在する案件になります。そして、Bの象限に存在する案件(解決すべき課題)こそが、この組織の将来を左右してしまうような案件だったりするのです。
米国のアイゼンハワー元大統領は、処理すべき案件をまさにこの考えで重要度と緊急度の軸で4つに分類し、机の上を同じように4つに分けて書類を置いていたらしく、この分類の仕方は「アイゼンハワーの机」とも言われます。
アイゼンハワー元大統領は、
Aの案件については、机に置く間もなく即座に自分で処理していた。
Cの案件については、秘書や国務長官などの部下に任せ、任せることで同時に育成面での成長も促した。
Dの案件については、とりあえず積んでおいていたそうです。すると、半分くらいは、そもそも課題ではなくなったり、誰かがやってくれていたり…放置しているうちに対処する必要のない案件になったといいます。そして、ときどき確認して緊急度が高くなってきたら対応するようにしたとのことです。
そして、アイゼンハワー元大統領は自分のエネルギーの8割くらいを傾け、Bの案件について中長期的な目標化をした上で取り組んでいました。つまり、アメリカという国の将来を左右するような案件の多くは、Bの領域に存在していたわけです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。