原則ネクタイ着用→TPOに応じて着脱可に
今年の1月に弊社で、ある通達がありました。服装に関するものでした。原則着用を義務としてきたネクタイ、「TPOに応じて着脱可」という運用に変更するという内容でした。驚きました。私は、ネクタイをつける習慣がないのですが。
クールビズの浸透でノーネクタイを認める企業は広がっていますが、クールビズを呼びかけていた環境省は近年、取組の期間を定めない年もありました(令和3年度クールビズについて【報道発表資料・環境省】)。温暖化の影響や、業界によってはフランクな装いのほうが受け入れられやすいこと、働き方が多様になってきたことなども、今回の運用方針の変更につながったのかな、ととらえています。
制度は時代に合わせて「よりよく」改定されていくものだと思います。それなら、今は昔よりも「素敵な時代になっているのかな?」と疑問がうかびました。本当に昔より良い環境なのか、何をもって良しとしているのか、自分の感覚を確認するために労働環境を中心に振り返ってみました。20年前、10年前、そして現在を比較して、どんな変化があったのでしょうか。
20年前、非正規雇用率が3割を超える
20年前の2005年、当時は90年代のバブル崩壊や金融危機の影響が残っていて、経済不安が続く状況でした。若年層の就職難が問題となった「就職氷河期」もこのころです。90年代から徐々に高まってきていた非正規雇用比率が3割を超えたころでもあります( 図8:雇用形態別雇用者数/早わかり・グラフでみる長期労働統計【労働政策研究・研修機構(JILPT)】)。有効求人倍率は0.95倍で、1倍を下回っていたようです。完全失業率は4.4%で、これだけでも当時の就職状況の厳しさが伺えます。ニートや格差社会といったワードが話題になったのもこのころです。年功賃金が一般的で、「1社で長く勤めたい」という終身雇用を望む声が強かったようです。
有給休暇の取得率は46.6%。当時働き盛りだったのは今の50代以上の皆さんでしょうか。「仕事の満足度」については収入面でポジティブな意見が少なく、お金のために残業するという選択を取っていた人もめずらしくなかったかもしれません。当時はまだメンタルヘルスケアの整備も不十分で、健康に支障が出てしまう人が増加傾向にありました。
10年前、買い手市場から売り手市場へ
10年前の2015年、消費税が8%になったころ(2014年)です。20年前にはなかった文明の利器スマートフォンの普及が進み、世代保有率は7割を超えたころで、SNSの利用も急速に広がり、だれでも簡単に情報を発信・共有できるようになりました。雇用環境は20年前とは打って変わって、人材不足が深刻な業界が出始めていました。生産年齢人口の減少から、女性や高齢者の就労を後押しする政策が増え、希望者全員の65歳までの雇用を義務化する法律(2013年)もでき、だれもが働きやすい環境の整備がスタートした頃、ともいえるかもしれません。
非正規雇用の割合は35%を超え、年々その割合が増えていることがわかります。有効求人倍率は1.20倍、完全失業率は3.4%でした。だんだんと募集企業が強い買い手市場から、就職希望者に有利な売り手市場にシフトしてきて、働き方に広がりが出始めました。有給休暇の取得率は47.6%で、2005年と比較して大差ないように見えますが、過労死防止対策推進法の成立(2014年)やストレスチェックの義務化(2015年)といった形で、労働者の「ワークライフバランス」や「生涯現役」の実現に目を向けた取り組みが増えるようになりました。
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●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。メディアソリューション事業本部データリサーチチーム所属。パートタイマー募集時時給等の賃金統計や、弊社サービス会員向けの各種アンケート調査の企画・分析などを主に担当。雇用の現状や今後の課題についての調査を進める一方、Webサイトのコンテンツ・ライティング、労働市場に関する情報提供、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。