自分で自分を演じるセルフアクトは、この矛盾を解決してくれます。「ミスをした自分」と「謝る自分」を分離させることで、ミスをした自分を客観的に見つめられるようになるのです。いわゆるメタ認知です。感情的に自分を責め続けるのではなく、「なぜミスが起きたのか?」「どうすれば再発を防げるか?」を冷静に分析できるようになります。セルフアクトは謝罪が楽になるだけでなく、同じミスを繰り返しにくくなることが最大の恩恵かもしれません。
【NG例】苦しい謝罪の会話
自分「この度は誠に申し訳ございませんでした」
相手「なんで、こんなことになっているんだ!!」
自分「私どものミスでこのような事態になり、深くお詫び申し上げます」
相手「だからっ!! 謝ってばかりいるんじゃなくて、原因を聞いているんだよ!!」
自分「実は関連部署の〇〇課に依頼したところ、うまく伝わっておらず勘違いが発生しまして…」
相手「今度は言い訳か!!」
⇒自責の念が強すぎると自分を客観視できず、建設的な話がしづらくなります
【OK例】セルフアクト謝罪の会話
自分「この度は誠に申し訳ございませんでした」
相手「なんで、こんなことになっているんだ!!」
自分「(部下の桑山君のミスで)相当大変なご迷惑をおかけしております。例えば○○に影響が出たり、××のスケジュールに遅れが出たりしていますよね」
相手「そうなんだよ、本当に大変なんだよ。大体、なんでこんな事態になったんだ」
自分「これは完全に(桑山君をはじめとする)私どものミスです。この事態を収拾するために、今すぐ(桑山君に指示して)△△の措置を取りつつ、○○でリカバリーに努めます。(桑山君のミスとはいえ)この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」
⇒自分のミスを部下がやったという体で謝ると客観視でき、対応しやすくなります
また、セルフアクトに限らず、謝罪で気をつけなければならないのは「逆説の接続詞」です。謝罪のあとに「でも」「だけど」などの逆接をつけると、言い訳に聞こえてしまいます。「申し訳なかったとは思っているんだけど、あのときは…」という一言で、謝罪全体が台無しになることもあります。無意識に逆接の接続詞を使うクセのある方は要注意。謝るときは余計な言葉をつけず、シンプルに伝えるほうが、相手の心に届きます。
まとめ
謝罪が苦手なのはプライドが高いからではなく、「自分の価値を否定されるような気がする」恐怖心があるからという場合もあります。その恐怖を和らげるテクニックが「セルフアクト」です。「ミスをした自分」と「謝る自分」を分け、「誰かのために謝る」感覚にシフトするだけで、心の負担はぐっと軽くなります。ミスをしたとき、まず自分に言ってみてください。「よし、あいつのために、私が謝ってやろう」と。
●文/桑山元(くわやま げん)
研修講師・お笑い芸人・俳優。早稲田大学教育学部を卒業後、大手損保会社に入社。新入社員代表として答辞を務める。入社2年目に資産運用担当者として1,000億円を運用。その後、メインバンク本店担当部署で法人営業を経験。同社を退社後、声優養成所を経て、時事ネタを得意とするコントグループ「ザ・ニュースペーパー」に19年間所属。2022年に退団し、芸人と研修講師の二刀流で活動スタート。会社員時代に培ったビジネススキル、お笑い芸人として磨いたコミュニケーションスキルとアドリブ力などを武器に、企業や自治体などで数多くの研修を実施。メディア出演・掲載実績多数。著書に『すぐ使える!おもしろい人の「ちょい足し」トーク&雑談術』(日本実業出版社)。キャリアコンサルタント(国家資格)、損保代理店資格(特級・一般)、ニュース時事能力検定(準2級)。