生成AIとの会話に似ている?
少し話が飛びますが、AIとの会話を考えるとわかりやすいかもしれません。
生成AIに何かを頼むとき、私たちは依頼文章となるプロンプトを入力します。メール文を作ってもらうとしたら「メール文作って」ですが、これだけ入力すると期待外れの結果が返ってくることが多いかと。そこで「取引先に断りの連絡を入れたい」「柔らかい表現で」「お詫びの気持ちを入れて」「400字程度で」などの具体的な条件を伝えます。すると、自分の理想の文章により近づいた結果になります。

AIは指示が曖昧な時、曖昧なりの処理しかしません。「空気を読む」「察する」がまだ難しいため、(いずれ技術発展で解消されるやもしれませんが)プロンプトには前提条件や目的、判断基準などを記す必要があります。これは、人間同士の仕事にも同じことがいえると思います。
「普通はこうするでしょ」
「それくらい常識でしょ」
「ちゃんと考えてよ」
ついつい言ってしまいそうになりますし、多分私も言いがちですが、働き方、世代、雇用形態、これまでの経験、育ってきた文化が違えば、「普通」も「常識」も少しずつ違います。AIには丁寧なプロンプトを書くのに、人間には察してほしいと期待して言わない。すべての人がAIと一緒に仕事をするのが当たり前になったら、人間同士のコミュニケーションにも、前提や目的を丁寧に共有する姿勢が当たり前になるのかもしれません。相手を尊重するからこそ、言語化する必要があることを、人事や管理職に限らず広く浸透するといいなと思います。
外国出身の従業員とのコミュニケーション
人材不足が叫ばれるようになって久しいですが、昨今は外国出身の従業員を迎える企業も増えてきました。日本という異国の地で、母国語とは異なる言葉を使い、働く人にとって、日本人がさも当たり前のように過ごしてきた習慣や前提は通用しないことがあります。仕事においては、「やっておいて」が何を指すのかとか、「これよろしく」のよろしくって挨拶なのかとか。私には想像しえない苦労があるでしょう。
日本人上司も気を使って仲良くなろうとフランクな言葉で会話しようとしても、です・ます調や敬語を前提に日本語を学んできた人にとっては余計ややこしくなる、なんて話もあるそうです。曖昧な部分まで言語化して伝えることは、日本人同士のコミュニケーションにとどまらず、外国出身の従業員との円滑な交流にも役立つことを、これから人と関わりながら仕事をするうえで頭に入れておきたいものです。
ただし、言語化が大切だからといって、言葉にできることだけが価値になるわけではありません。むしろ、前提やルールを共有したうえで、相手の状況を見て一歩先の行動を考える力は、これからの時代により重要になるのかもしれません。言葉にする、互いの期待をすり合わせる、当たり前が違う前提に立つなどがより一層大切になってくるといった主旨で書いてきましたが、これからのAI時代、人が仕事をするうえで「空気を読む」文化が求められるかも、と思う経験があります。
●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。メディアソリューション事業本部データリサーチチーム所属。パートタイマー募集時時給等の賃金統計や、弊社サービス会員向けの各種アンケート調査の企画・分析などを主に担当。雇用の現状や今後の課題についての調査を進める一方、Webサイトのコンテンツ・ライティング、労働市場に関する情報提供、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。