旅先でのタクシーでの出来事
以前、友人と旅行で県外に行った際、宿泊先のホテルまでタクシーで向かうことがありました。観光地ではあるものの夜は更けていて真っ暗、ホテルまでの道のりは静かな山道でした。運転手さんは私たちにどこから来たのか尋ねます。それぞれ別の地方から集まって初めてこの街に来たこと、自分たちの住むところとは違う雰囲気であること、こんなに真っ暗になると思わなかったなど、観光客丸出しで話します。途中、私は運転手さんが内線か何かで話をしながら、メーターを止めたことに気づきました。その時は特に考えず、もうすぐつくのかな、なんて思っていました。
タクシーは山道を進み、ある場所で速度を落としました。運転手さんに「着きましたよ」と言われますが、そこは私たちが泊まるホテルではない建物がありました。一瞬、不安がよぎりました。なぜホテルではない場所に着いたのか。走って逃げないといけないやつかもしれない。私たちはそう思っていました。すると運転手さんは「この時期、とてもきれいなイルミネーションがここで見られるんです」と言いました。
タクシーが停まった先は12月の特別な光の道で彩られ、街の景色も輝く絶景の場所でした。運転手さんによると、その場所は目の前のホテルに宿泊のお客様のみ利用できるのですが、さっき確認したら使っていいと許可もらったとのこと。一瞬でも犯罪者を疑ってすみません、となりました。「あぁ、これが気づかい」とか「おもてなしとか、そういうやつだ!」と思いました。私たちはイルミネーションを存分に楽しんで、本来のホテルまで届けてもらいました。
これからのビジネスマナーに求められること
言葉にしなければ伝わらないことは、確かに増えています。けれど、すべてを言葉にすればよい、ということでもないのかもしれません。前提を決めつけず、必要なことはきちんと言語化する。そのうえで、目の前の相手の表情や状況に目を向け、「今、この人にとって何が助けになるのか?」を考える。これからのビジネスマナーに求められるのは、昔ながらの型を一方的に押しつけることでも、空気を読む力だけに頼ることでもなく、言葉にする配慮と、言葉になる前の気配に気づく配慮の両方なのだと思います。
「ちゃんとして」の“ちゃんと”は、人によって違います。だからこそ中身を共有し、ときには共有されたルールを少し越えて、相手のためにできることを考えること。働く人が多様になる時代において、マナーは誰かを評価するための物差しではなく、互いに気持ちよく働くための共通言語です。「ちゃんとして」と言う前に、その“ちゃんと”の中身を共有する意識と行動につなげていきたいものですね。
●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。メディアソリューション事業本部データリサーチチーム所属。パートタイマー募集時時給等の賃金統計や、弊社サービス会員向けの各種アンケート調査の企画・分析などを主に担当。雇用の現状や今後の課題についての調査を進める一方、Webサイトのコンテンツ・ライティング、労働市場に関する情報提供、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。