<ストレス心理コンサルティング>
麻衣は、まずクレンチング症候群の治療を優先したほうがいいだろう。また、クレンチング症候群の影響で満足に食事がとれずに栄養不足になっており、それがうつ状態を深刻にした可能性がある。脳に必要なオメガ3脂肪酸のEPAとDHA、不足するとうつ状態になりやすいビタミンB12や葉酸、ほかにもビタミンC、鉄分やマグネシウムなどのミネラルなど、とれていない栄養はたくさんあった。食事ができるようになるまで、不足している栄養素をゼリーやサプリメントなどで補う必要がある。
表情フィードバック仮説
麻衣の笑顔はお客様を温かい気持ちにし、それが購入を決める後押しになっていた。それは天性のもので、彼女の強みなので活かしたほうがいい。
ペンシルベニア大学のシガル・バーセイド教授は研究で、人は自分が接した相手の表情や感情をまね、それが雰囲気に影響されることを発表している。表情フィードバック仮説のようなものだ。表情フィードバック仮説とは、自分の表情が感情に影響を与えるという心理学の仮説である。例えば、笑顔になるとポジティブな感情が高まったり、不快な表情だとネガティブな感情が強まったりするというものだ。
自分を思いやる力
彼女は、自分にもっと優しくなる必要がある。自分自身を思いやることができれば、ストレスを抱え込まなくても済むようになるだろう。
スタンフォード大学の「思いやりと利他主義の研究教育センター」の研究で、自分を思いやる力を充実させると、自分を追いつめなくなることが分かった。自分を思いやる力の充実は、困難に対処するレジリエンス(逆境を乗り越える力)の向上につながることも分かっている。自分を思いやる力は、習慣にしなければ身につかない。例えば、心の中で自分に思いやりのある言葉を掛けることだ。
「強み」を最大化する
麻衣の強みは、卓越した天性のセールス能力だ。彼女は車が好きで、車を求めるお客様との対応も好きだ。そして、お客様もそれを楽しみにしているはずだ。休暇中、彼女は自分の強みを最大化することが、自分らしく生きることになることを再確認した。会社に戻ったらチームリーダーではなく、一人の営業としてやっていきたいと伝えることを決めた。すると、麻衣の症状は少しずつ改善し、仕事にもやる気が戻ってきた。
※参考書籍
『薬だけに頼らずうつがみるみる遠ざかる食べ方大全』功刀浩/文響社
『脳の不調を治す食べ方』ウーマ・ナイド/KADOKAWA
『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』ケリー・マクゴニカル/日経BP
『ポジティブ・リーダーシップ』マーガレット・グリーンバーグら/草思社
『潜在能力を最高に引き出す法』ショーン・エイカー/徳間書店
『共感力』ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編/ダイヤモンド社
●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。