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脳診断で、社員と組織を強くする！

最終回　脳タイプを組織づくりに生かす

第１回、第２回で解説したように、社員各自の適性を診断し、適性に合った業務を担当すれば仕事の効果が上がり、組織能力も向上できます。最終回は、実践する場合のポイントを、数ある実例などから学びましょう（T&T PARTNERS会長、公認会計士　�睛�智弘）

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１．組織能力向上の実践例

◆実践１／取締役会の活性化事例
　世界最大級の化学会社デュポン社で、今までギスギスしていた取締役会を何とか活性化しようと、適性診断のハーマンモデルを導入した。その結果として、なぜあの役員は私の行動や言動に反対をし、人の足を引っ張るのかと思っていた疑問を解消できることになった。つまり、ハーマンモデルによると彼らは単に性格が自分と正反対のタイプだったのだと気が付いた。

　事実、きちんと観察すると、皆無とは言わないが人の足を引っ張る人はほとんどいない。そうではなく、皆、自分の考えで一生懸命働いていることが分かる。このような疑問の解消で、仕事がしやすくなり雰囲気が一変し、組織能力が向上した。

　つまり、ハーマンモデル導入の結果、人の適性・タイプの違いが理由で議論が白熱していたことが、問題が起こる原因のほとんどだと分かった。また、個人の適性を公開することで、相互理解ができ、コミュニケーションが進んで、経営が飛躍的に活性化した。　

◆実践２／リーダーシップに関わる改善・改革事例
　筆者は、「現場の行動は、知識を使った知恵であり、知恵は知心によって変わる」と思っている(筆者は、人の意識のことを、「知」の中身である知識や知恵と平仄（ひょうそく）を合わせて、「知心」と表現している)。筆者の経営コンサルティングの経験知から、改善・改革がうまくいかない問題点を探ってみよう。

　　まず基本的な考え方である。知識は100のうち、例えば70を使えば、ほとんどの人が「良く考えた」と満足してしまう。そして知恵は、知識を使った行動だが、人は「一生懸命やったのでこれでよい」と思い込む。つまり、このケースでは、使った70の知識のうち60位は実行できたから十分だと思い込む。

　さらに、問題としてよくあるケースは、例えば、「何でいつもよりスピードが遅いのか？」という上司の言葉があったとする。実は、社員が上司に不満があり、やる気を無くしている状況を想定してみよう。当然に仕事が手につかない結果は目に見える。言い換えれば、ある事象が社員のやる気を下げ、実際には、実行すべき知恵60のうちの30〜40しかできなくなる（知心）状況が生じる。

　すなわち、業務の改善・改革をするときは、仕組みを作って指示をしても、実際の実行度合い（効率）が４０％程度に落ちることも想定しなければならない。そうならないように、トップがリーダーシップを発揮する。具体的には、個人の適性に応じた各業務プロセスの実行において、意識・知恵・知心の全レベルで、社員の指導・教育をする。

　つまり、いかに社員に情熱を傾けさせるか、やる気にさせるかが、重要成功要因である。

◆実践３／病院における知の経営の例
　病院組織は、ピーター・ドラッカーが言うナレッジワーカー（医師、技術者、看護師、職員等）の集まりである。病院も経営が難しくなっている中で、より良い医業経営を行うためには、病院の業務プロセスを顧客志向に変革することが必要である。いろいろなお客さまがおり、また、少子高齢化で年配者がどんどん増えて行くなど環境が変化している中で、業務プロセスを変革しなければならない。
　
　変革するためには組織の知が必要であるが、組織の知は個々人の知が結集した結果である。したがって、ナレッジワーカーである病院職員を大事にし、自主的に動いた個々人が接する、顧客（患者）のニーズやクレーム情報を共有し、解決策としての個人のノウハウを出しやすくする仕組みを作ればよい。個人知が集団知になって組織の知になり、結果、業務が改革できる。目的は病院プロセスをお客さまに合ったように直していくことである。

　「私の仕事ではない」とか、「私に関係ないとか」ではなく、顧客にとっては全部が１つであり必要なプロセスである。それらを直していくことによって、その病院が信頼される組織になる。ハーマンモデルで解説される多様なナレッジワーカーの意識（知心）を変えればできることであり、それを行うことが「知の経営」である。

　これらの3つの実践で分かるように、個人の集まりである組織の経営は、個人の能力を組織の能力にすることが成功の要因である。したがって、組織を成功させる経営の基本は、個人の能力を最大限に活用することであり、そのためには、個人の適性を科学的に知ることが重要となる。


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�睛� 智弘（たかなし ともひろ）   　 　
T&T PARTNERS 会長、公認会計士、新潟大学大学院ＭＯＴ特任教授、日本ナレッジ・マネジメント学会　副理事長。　　　
専門：経営コンサルティング（中堅中小企業の実践力を高める経営改善で評判）と企業研修。特に経営品質・ベンチマーキング・内部統制・知の経営・人財マネジメント等。
著書：「知の経営 透き通った組織」（白桃書房2009）　「ハーマンモデル」 ( 監訳、東洋経済新報社2000 )　他多数。 
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