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社会で働くときに、知っておきたいこと、身につけておきたいこと、考えておきたいことなどを解説したり、考察します。(2021年3月11日)
巨大な小惑星が衝突する
もし半年後に世界が滅びるとしたら、あなたは今の仕事を続けますか?
そんな状況に置かれたら、たいていの人は仕事を放り出してしまうのでは…(かくいう私もご多分に漏れず、給料を得るためだけの仕事はやめます)。たとえ今の仕事に心の底から満足している人でも、あらためて自分がしていることに向き合わざるを得ないと思います。
そんな極限下の状況を舞台にした小説があります。アメリカのミステリー小説『地上最後の刑事』(ベン・H・ウィンタース著/早川書房)は、巨大な小惑星の衝突が迫り、半年後に地球が壊滅するという世界で起きた自殺について、新人刑事が疑いを持つところから物語が始まります。
職務をまっとうする
ある日、ファストフード店のトイレで死体が発見されます。ベルトで首を吊った死体は保険会社に勤める男で、警察は遠くない人類滅亡の未来を悲観しての自殺と判断。しかし主人公の新人刑事は、男の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品であることに気づき、他殺を疑います。今から命を絶とうとしている者が、わざわざそんなものを買い求めるだろうか。男の顔には数日前に負ったと見られる打撲傷もあり、同僚たちに呆れられながらも捜査に乗り出します。
地球滅亡が間近に迫った世界では、社会は機能を失いつつあります。仕事を投げ出して享楽的に生きようとする者たちが増え、犯罪行為が横行し、ドラッグに手を出す者は後を絶たず、自殺も増加するばかり。警察もかろうじて組織としての体裁を保っているような状態で、誰も捜査をすることに意味を見出していません。そんな中、主人公は刑事としての職務をまっとうしようと孤軍奮闘します。
今日が人生最後の日だとしたら
「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか? それに対する答えが“NO”の日が幾日も続くと、そろそろ何かを変える必要があるなと、そう悟るわけです」
これはアップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業祝賀会で行った有名なスピーチの一節です。
第2次大戦中、ナチスにより強制収容所に送られたユダヤ人の精神科医ヴィクトール・E・フランクル氏は、想像を絶する状況の中で生きる人々を見つめた体験記録を著しました。世界的な名著『夜と霧』(みすず書房)です。同書の一節を引用します。
「強制収容所にいたことのある者なら、点呼場や居住棟のあいだで、通りすがりに思いやりのある言葉をかけ、なけなしのパンを譲っていた人びとについて、いくらでも語れるのではないだろうか。そんな人は、たとえほんのひと握りだったにせよ、人は強制収容所に人間をぶち込んですべてを奪うことができるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由だけは奪えない、実際にそのような例はあったということを証明するには充分だ」
戦後、フランクル氏は奇跡的に生還し、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けます。どんなときでも、自分のあり方を決めるのは自分です。過酷な状況であればあるほど、自分の生き方が問われているのかもしれません。
さよならだけが人生だ
私たちは与えられた条件の中で、自分のできることをやっていくしかありません。メメント・モリ。武士道とは死ぬことと見つけたり。花に嵐のたとえもあるさ、さよならだけが人生だ。いつか自分は死ぬという現実に対して、今ある生をまっとうするという心の持ち方は、古からいろいろな表現で現代に伝わっています。
あれこれと想像をめぐらせても、明日のことは明日にならなければ分かりません。今できることに取り組んでいきたいと思います。
●文/株式会社アイデム 東日本事業本部 データリサーチチーム
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