報告書やメール、SNSでの発信など、ビジネスは文章を書く機会にあふれています。さまざまな目的に合わせて、伝わる文章を書くために必要なことを解説します。(2025年2月4日)
自分の主張や提案、報告などを文章でわかりやすく伝えるには、内容を理解しやすい構成にする必要があります。構成とは、道案内のようなものです。所要時間や距離を伝え、経路周辺の目印を示して目的地まで案内するように、スムーズに読み進めてもらえるようにすることです。具体的には「何から書き始めるか?」「どうやって話を進めていくか?」などを決めることです。今回は構成について、さまざまな手法を紹介します。
(1)PREP法
ビジネスでよく使われるフレームワークで、資料作成やプレゼンなどでよく使われるやり方です。最初に結論(Point)を伝え、それに至った理由(Reason)を説明します。そして説得力を持たせるために事例・データ(Example)を示し、最後にもう一度、結論(Point)を述べます。最初に結論を伝えるので、読み手は「これは何の話か?」を頭に置きながら読み進めることができます。
<例1:経費削減の提案>
・Point:結論(提案・主張)
案内パンフレットにかかる費用を見直すと、約20%のコスト削減になる
・Reason:理由(提案・主張に至った理由)
デジタルデータを活用することでコストを削減できる
・Example:具体例(説得力を持たせる事例・データ)
案内パンフレットの印刷をやめ、PDFなどにしてインターネットで送付する
・Point:結論(提案・主張)
上記の対応を検討することで約20%のコスト削減になる
(2)SDS法
PREP法のように最初に要点(Summary)を述べ、次に詳細(Details)、そしてまた要点(Summary)を述べるというやり方です。PRER法を簡素な形にしたものと言えます。活用イメージで考えると、PREP法は主張や提案で、SDS法は報告です。情報伝達が目的なら、SDS法のほうが適していると言えます。
<例2:システム導入の検討結果>
・Summary:要点
顧客管理システムの導入を検討したが、「A社のシステムが合う」という結論に至った
・Details:詳細
A社、B社、C社のシステムを検討したが、希望要件をすべて満たすのはA社のみ
・Summary:要点
そのため、「A社のシステムが合う」という結論に至った
(3)CRF法
最初に結論(Conclusion)を伝え、次に理由(Reason)を説明し、最後に事実(Fact)を示すやり方です。結論から述べるのはPREP法やSDS法と同じですが、最後にもう一度、結論を述べないところが違います。読み手に内容の前提が伝わっていたり、読む前から興味を持ってもらっていたりするときに適しています。
<例3:予算拡充の提案>
・Conclusion:結論
人材育成の予算を拡充し、社員教育に力を入れたい
・Reason:理由
新人の定着率や離職率を下げるため(社員教育に力を入れ、新人に成長できる企業というイメージを持ってもらいたい)
・Fact:事実
新人の離職率が年々上昇している。また、退職理由として「成長できない」「社員教育の制度がない」などの不満が上がっている
(4)DESC法
相手を尊重しながら、自分の考えや気持ちを伝えるコミュニケーションスキルで、アメリカの心理学者、ゴードン・バウアーによって提唱されたものです。文章の構成を考えるときにも応用できます。相手に配慮しながら、納得を得られるように進めていくため、改善や提案を伝えるのに向いています。
<例4:時間を守れない人に改善を促す>
・Describe:描写
約束した時間に「遅れることが多い」という事実を伝える
・Explain:説明
遅れる理由があると思うが、約束した相手に迷惑をかけているのでは?
・Specify:提案
事前に確認したり、アラームを鳴らしたりしてはどうか?
・Choose:選択
ほかにも方法はあると思うので、自分でも考えてみてほしい
(5)TAPS法
文書やプレゼンテーションなどで、課題解決を提案するときに効果的な構成方法です。理想(To Be)と現状(As Is)の比較から課題(Problem)をみつけ、解決策(Solution)を示すものです。
<例5:生産性を上げる提案>
・To Be:理想
生産性を上げるには、それぞれが困っていることを知る必要がある
・As Is:現状
しかし「誰が、何に困っているか」わからない
・Problem:課題
情報共有の機会がなく、一人一人の状況がわからない
・Solution:解決策
定期的に情報共有の機会を設けたり、困っていたりすることがあれば発信する
内容と読み手に合ったもの
構成のさまざまな手法をご紹介してきましたが、基本は結論から述べることかもしれません。ビジネスでは、わかりやすさや簡潔さを求められることが多いからです。一方、企画や提案などのプレゼンテーションでは「読み手の興味を引く」という観点から、問題提起や現状の課題分析から入ってもいいかもしれません。伝えたい内容や想定している読み手、納得性の高さなどを考えながら最適なものを選びましょう。
●文/三宅航太
株式会社アイデム東日本事業本部 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。