入社した4月に転職サイト登録、2011年比で31倍
退職代行会社の利用が、若い人を中心に広がっています。ゴールデンウィーク明けに依頼が殺到したことを代行会社がSNSで発信し、注目を集めました。昨年、新卒の利用者が最も多かったのは5月だったようです。入社から1カ月が経過し、現実に直面したり、理想とのギャップを感じたりするころです。また、求人情報会社の調査で、新卒者で入社した4月に転職サイトに登録した人が2011年と比べて31倍になったという結果が出ています(新社会人の転職サイト登録動向2025年版)。
プライベートを優先したい、努力が報われない
新卒者の転職意向が高まる一方、仕事に意欲や熱意を持たず、必要最低限の業務をこなすだけの働き方が広まってきています。「静かな退職(quiet quitting)」と呼ばれるもので、コロナ禍をきっかけに2022年ごろにアメリカから広まった概念です。実際に退職するのではなく、退職が決まった人のようなマインドで働くことを指します。仕事でキャリアアップや昇進を望まず、人生において働くことに比重を置かない価値観と言えます。
<「静かな退職」状態にある人の主な特徴>
・社内の付き合いはさける
・残業は最小限にとどめる
・有休はしっかり取る
・管理職になりたくない
「静かな退職」を選ぶ理由は、「仕事にやりがいを感じない」「プライベートを優先したい」「一生懸命やっても評価されない」「キャリアアップに興味がない」などが考えられ、専門機関による調査結果でもそうした項目が上位にあがっています(GPTW Japan「静かな退職に関する調査2024年」)。
働きやすい環境とギャップを埋めること
企業にとって、新卒者が入社時から転職を考えたり、キャリアアップや昇進を望まない人が増えたりしているのはショックなことかもしれません。ですが、自分にとってよりよい仕事を探すことや、仕事に比重を置かない価値観を持つことは個人の自由です。こうした状況を踏まえると、企業には採用した人に働き続けてもらうための取り組みが必要と言えます。
働き続けてもらうためのアプローチは2つあります。1つは働きやすい環境の実現です。さまざまな事情の人たちが勤務しやすく、誰もが公平な評価や待遇を受けられる職場です。もう1つは採用選考の段階で、実際の職場を知ってもらうことです。代表的な離職理由の1つは期待と現実のギャップで、例えば、入社前に聞いていた仕事内容や労働条件が「実際とは違った」ということです。ポジティブな面だけではなく、ネガティブな面も含めて率直に伝えることが大切です。
企業の7.5%が週休3日制導入、4月から東京都も
働きやすい環境を実現する具体策として、働き方の選択肢を増やすことがあります。例えば、週休3日制はその1つですが、大手企業だけでなく、地方自治体でも取り入れるところが増えています。すでに茨城県、千葉県、兵庫県などで導入され、この4月から東京都も導入しています。目的は柔軟な働き方を推進し、育児・介護・自己啓発などと仕事の両立をしやすくするためです。厚生労働省の調査によると、2024年時点で週休3日制を導入している民間企業の割合は7.5%となっています(令和5年就労条件総合調査/有効回答3,768社)。
※参考
●文/三宅航太
株式会社アイデム メディアソリューション事業本部 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。