自律的に行動する組織
ティール組織が注目された背景には、経営環境の変化があります。かつては時代の変化がそれほど大きくはなく、特に欧米の動きを見ていれば、日本の進む方向もある程度予測できました。そのため欧米の製品やサービスを分析して、安く、安定して大量生産することができたのです。そのような環境で働く人に求められたのは、経営者や管理職が指示した仕事を、マニュアルどおり着実に実行することでした。
しかし今は、環境の変化が速く、先を読むことが難しい時代です。さらにAIの普及により、指示された仕事をそのとおりにこなすだけの働き方は、次第に代替されつつあります。これから求められるのは、どのような立場であっても、状況を見ながら自ら判断し、行動できる人材です。ラルー氏は、従来の組織を「機械のような組織」、ティール組織を「生命体のように進化する組織」にたとえました。変化の激しい時代には、管理で動く組織より、自律的に動き、自ら進化する組織が必要となっているのです。
ティール組織の3つの条件
ラルー氏は著書の中で、ティール組織の条件として、次の3つを挙げています。
・自主経営(セルフマネジメント)
・進化する存在目的(エボリューショナリー・パーパス)
・全体性(ホールネス)
この3つと組織の関係は、ラグビーのようなチーム競技にたとえると、理解しやすいと思います。ラグビーでは、試合が始まれば、現場でプレーする選手たちが状況を見ながら判断して動きます。監督は方針を示すことはできますが、試合中にフィールドに降りて、プレー一つ一つを指示することはできません。これは「自主経営」といえるでしょう。すべての選手たちは、得点を重ね、相手の攻撃を防ぎ、試合に勝つという共通の目的に向かって動きます。これが「進化する存在目的」ですね。
そのためには、一人一人が自分の役割だけを考えるのではなく、チーム全体の勝利のために動く必要があります。ラグビーの精神として知られる「One for All, All for One」は、まさに「全体性」を表しています。
ポイントは、現場への権限委譲と情報の透明化
こうした自律的な組織をつくるには、何が必要なのでしょうか。2つの大事なポイントを挙げましょう
第一に必要なのは、「現場への権限委譲」です。一人一人が自分で判断し、動けるようにしなければ、自律的な組織にはなりません。ただし、ここで大事なのは、ティール組織は「自由放任」ではないということです。一人一人が好き勝手に動くことでも、自分の都合で判断することでもありません。あくまで組織の目的に沿って、自律的に動くことが求められます。
そのための前提として欠かせないのが、第二のポイントである「情報の透明化」です。組織において、権限と情報はセットです。判断を任せるのに、必要な情報が与えられていないのでは、自律的に動きようがありません。
スポーツも同じですよね。ラグビーやサッカーで、選手がフィールド全体の状況を把握できなければ、どれほど個人の能力が高くても、チームとしては機能しません。企業のような組織の場合でも、「誰が何をしているのか?」「何が起きているのか?」「どこに課題があるのか?」が見えるようになって初めて、メンバーは自分で考え、他者と協力しながら動けるようになるのです。
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●文/島青志(しま せいじ)
ブルーロジック株式会社代表取締役、イノベーションデザイナー
ITベンチャー、広告会社、会計事務所などを経て、 2010 年に経営コンサルティングを行うブルーロジック株式会社を創業。アート思考、デザイン思考、システム思考を基盤に、企業のDX導入や組織変革のサポート、イノベーション(新製品開発)の創出支援などを行っている。著書に『熱狂顧客のつくり方』(IBCパブリッシング)、『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)、『頭がいい人の思考のコツ 考えるスイッチ』(総合法令出版)など。企業研修、講演、セミナーへの登壇多数。