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社員が自ら動き出す職場のつくり方〜ティール組織という選択〜

マネジメントや人材の活用・育成、組織運営など、人事労務に関する課題や問題をテーマに有識者や専門家に解説していただきます。(2026年4月2日)

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自律的に行動する組織

 ティール組織とは、社長や上司が細かく指示や命令を出さなくても、メンバー一人一人が組織の目的に向かって自律的に行動する組織モデルです。この概念を世に広めたのが、元マッキンゼーのコンサルタント、フレデリック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』(邦題:『ティール組織』英治出版)です。同書は世界で100万部以上、日本でも10万部を超えるベストセラーとなり、多くの経営者の関心を集めました。

 ティール組織が注目された背景には、経営環境の変化があります。かつては時代の変化がそれほど大きくはなく、特に欧米の動きを見ていれば、日本の進む方向もある程度予測できました。そのため欧米の製品やサービスを分析して、安く、安定して大量生産することができたのです。そのような環境で働く人に求められたのは、経営者や管理職が指示した仕事を、マニュアルどおり着実に実行することでした。

 しかし今は、環境の変化が速く、先を読むことが難しい時代です。さらにAIの普及により、指示された仕事をそのとおりにこなすだけの働き方は、次第に代替されつつあります。これから求められるのは、どのような立場であっても、状況を見ながら自ら判断し、行動できる人材です。ラルー氏は、従来の組織を「機械のような組織」、ティール組織を「生命体のように進化する組織」にたとえました。変化の激しい時代には、管理で動く組織より、自律的に動き、自ら進化する組織が必要となっているのです。





ティール組織の3つの条件

 ラルー氏は著書の中で、ティール組織の条件として、次の3つを挙げています。

・自主経営(セルフマネジメント)
・進化する存在目的(エボリューショナリー・パーパス)
・全体性(ホールネス)

 この3つと組織の関係は、ラグビーのようなチーム競技にたとえると、理解しやすいと思います。ラグビーでは、試合が始まれば、現場でプレーする選手たちが状況を見ながら判断して動きます。監督は方針を示すことはできますが、試合中にフィールドに降りて、プレー一つ一つを指示することはできません。これは「自主経営」といえるでしょう。すべての選手たちは、得点を重ね、相手の攻撃を防ぎ、試合に勝つという共通の目的に向かって動きます。これが「進化する存在目的」ですね。

 そのためには、一人一人が自分の役割だけを考えるのではなく、チーム全体の勝利のために動く必要があります。ラグビーの精神として知られる「One for All, All for One」は、まさに「全体性」を表しています。


ポイントは、現場への権限委譲と情報の透明化

 こうした自律的な組織をつくるには、何が必要なのでしょうか。2つの大事なポイントを挙げましょう

 第一に必要なのは、「現場への権限委譲」です。一人一人が自分で判断し、動けるようにしなければ、自律的な組織にはなりません。ただし、ここで大事なのは、ティール組織は「自由放任」ではないということです。一人一人が好き勝手に動くことでも、自分の都合で判断することでもありません。あくまで組織の目的に沿って、自律的に動くことが求められます。

 そのための前提として欠かせないのが、第二のポイントである「情報の透明化」です。組織において、権限と情報はセットです。判断を任せるのに、必要な情報が与えられていないのでは、自律的に動きようがありません。

 スポーツも同じですよね。ラグビーやサッカーで、選手がフィールド全体の状況を把握できなければ、どれほど個人の能力が高くても、チームとしては機能しません。企業のような組織の場合でも、「誰が何をしているのか?」「何が起きているのか?」「どこに課題があるのか?」が見えるようになって初めて、メンバーは自分で考え、他者と協力しながら動けるようになるのです。
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●文/島青志(しま せいじ)
ブルーロジック株式会社代表取締役、イノベーションデザイナー
ITベンチャー、広告会社、会計事務所などを経て、 2010 年に経営コンサルティングを行うブルーロジック株式会社を創業。アート思考、デザイン思考、システム思考を基盤に、企業のDX導入や組織変革のサポート、イノベーション(新製品開発)の創出支援などを行っている。著書に『熱狂顧客のつくり方』(IBCパブリッシング)、『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)、『頭がいい人の思考のコツ 考えるスイッチ』(総合法令出版)など。企業研修、講演、セミナーへの登壇多数。
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