Aさんは出かける用事があったため、Bさんに「赤ちゃんをみておいて」とお願いしました。Bさんは承諾し、Aさんはお出かけに。用事が済んでAさんが戻ると、赤ちゃんは泣いています。どうやらおなかがすいている様子。「見ておいてといったのに!」AさんはBさんに問いますが、Bさんの返事は「見ておいてと言われたから見ていたのに……」。
今日はそういうお話です。
「最近の若い人は、挨拶がなっていない」
「チャットで済む話なのに、いつも電話してくる」
「あの人はちょっと配慮が足りないよね」
職場では時折こんな会話があるかもしれません。どれもほんの些細な違和感と言ってしまえばそれまでですが、多くの人が一度は経験したことがありますよね。もしかしたら、「マナーの良し悪し」の話にも映りますが、実際には別の問題の可能性があります。
自分で気を付けていること、相手に求めること
2026年3月に実施したイーアイデム会員アンケートでは、ビジネスマナーについて日頃「自分で気を付けていること」と「相手に求めること」をきいた結果をまとめています(いずれも最大3つまで)。いずれも「挨拶」「時間を守る」「話し方、聴き方」が上位に来ていて、自分にも相手にも共通して必要であると考える人が多いようです(2026年3月イーアイデム会員対象アンケート結果)。

今回注目したいのが「自分で気を付けていること」よりも「相手に求めること」のほうが高くなった項目です。「話し方、聴き方」は自分38.4%、相手に求める人40.2%。「所作・立ち居振る舞い」は自分21.1%、相手24.0%。「年長者への敬意、年少者への配慮」は自分21.1%、相手27.3%。「役職や立場といった上下関係」は自分9.4%、相手22.0%と大きく差が開きました。つまり、自分では意識していないところで相手には求める条件があるようです。
ここが、近年のビジネスマナーの難しさではないかと感じています。
挨拶の声やその時の顔色で部下の健康具合などを気にしている人は「最近の若い人は、挨拶がなっていない」というけれど、相手の人は「他の人と会話中だったから邪魔しちゃ悪いと判断した」かもしれない。過去に急ぎの連絡をチャットでされて困った経験がある人は「チャットで済む話なのに、いつも電話してくる」かもしれないし、相手の人は「電話で拘束されるのが嫌」かもしれない。
これはどちらかが非常識とか、マナーに欠けるわけではなく、お互いに良かれと思っていることや、期待がズレていることに気づいていないことが原因のひとつでしょう。
相手にとって何が配慮になるのか?
日本には「空気を読む文化」が他の国よりも強いと耳にしたことがあります。相手の表情や場の雰囲気をみながら、言い方を調整する、直接言いすぎず遠回しに伝える、相手の面目をつぶさないように黙っておく、恥をかかないように振舞うなど、それは良好な人間関係を保つ上で大切な知恵だと思います。その一方で、「空気」には大前提・常識・当たり前と思われていることが共有されないまま「読め」と強要される怖さもあります。
ある人にとっては会議冒頭でのアイスブレイクが「場を温める配慮」だとしても、別の人にとっては「時間を有効に使うために早く本題に入りたい」と感じてしまうこともあります。また、敬語には「相手を敬う」効果のほかに「距離を取る」効果もあるため、社内では全員に敬語で話す人もいれば、その人に冷たい印象を持つ人もいるでしょう。
最近のビジネスマナーは従来言われてきた内容だけでは完結しなくなっています。これまでもビジネスマナーで大切とされてきた挨拶や身だしなみといった「型がある」ものに加えて、相手の立場に立った行動や気配り・心配りという「型がない」ものも求められるようになっています。相手や状況によって「何が配慮になるのか」のすり合わせが必要なのです。
※最新号のみ、会員登録(無料)なしで閲覧いただけます
●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。メディアソリューション事業本部データリサーチチーム所属。パートタイマー募集時時給等の賃金統計や、弊社サービス会員向けの各種アンケート調査の企画・分析などを主に担当。雇用の現状や今後の課題についての調査を進める一方、Webサイトのコンテンツ・ライティング、労働市場に関する情報提供、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。