上司は不安なのに、部下は自信満々。このギャップをどう正す?
今回の「部下の成長段階に応じた育成のステップ」で着目すべきは、前回のコラムで予告したとおり、右下の「上司は不安に感じているのに、部下は自信満々である」という領域になります(図6を見てください)。

上司と部下の間でギャップが生じているわけで、このギャップは正していく必要があります。ここは「正すマネジメント」と呼ぶことにしましょう。
真ん中と左上の「引き出すマネジメント」が「褒める」に近い領域だとすれば、右下の「正すマネジメント」は「叱る」に近い内容になります。
最初に大切なことをお伝えしますが、正すときのポイントは「人格否定はNG」だということです。パワハラ防止のガイドラインでも、このことは真っ先に強調されています。正すのは「性格」ではなく「行動」であることを、みなさんもまずは強く認識していただければと思います。
もちろん性格が行動に影響を与えているのは紛れもない事実ですが、行動と性格は別物だという前提で考えてください。
「三つ子の魂、百まで」という言葉があるように、私は、「性格は変わらないが、行動については、意識した瞬間に変えることができる」と思っています。そういう意味では、自分自身の性格は、ある意味かけがえのない自分だけのもの…つまり個性そのものなので、それは大事にすべきものだとも思っています。
ただ、望ましい行動については、自分でも「そうすべきだな」と思ったら、すぐにでも変える必要があります。そして、努力さえすれば変えることができるのです。
ビジネスの世界では、「性格」は問われませんし、言い訳にもなりません。評価対象になるのは、あくまでも「行動」なのです。
「人見知りの性格なので、人前で説明することはできません」とか、「おっちょこちょいなので、計算ミスしますが、許してください」とは言えないのです。
なので、上司が部下を正す場合は、性格に言及するのではなく、行動レベルで具体的なアドバイスをすることが望まれます。
「どんくさいから会議に遅刻するんだ!」と叱られても、叱られたほうは、身もふたもありません。
こういう場合は、「会議に行く準備を始めるのが遅いのが問題だと思うよ。そこを直して5分前行動をしてみなさい。例えば、重要な会議の10分前には、スマホのアラームをセットするようにしたらどうだろうか?」というアドバイスのほうが効果的です。
「キミの性格は暗いね。もっと明るくなりなさい」なんて、誰からも言われたくないですよね。ただ、「今日は大切なお客さんが来るから、明るく振る舞ってほしい」というのは、行動についての要望なので、間違ったことではありません。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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