厚生労働省は9月から時間外労働(残業)について、労働基準監督署の指導方針の見直しを発表しました。これまでは労使協定(36協定)に特別条項を結び、月100時間未満(休日労働含む)まで残業可能な事業所でも、労基署は月45時間以内に抑えるように指導してきました。ですが、指導方針を見直し、企業ごとの健康確保措置の実施状況に応じて必要な対応を取る方針に転換します。
見直しの背景には、一部の企業からの要望があるようです。特別条項があっても労基署は45時間以内とするよう一律の指導をしていることについて、「画一的で実態に即していない」という声が上がっていました。一方で、今回の見直しについて労働団体などから、時間外労働が助長されるといった反発が出ています。
労働基準法が定める労働時間の上限は1日8時間、週40時間です。これを超えて働かせるには、労使が36協定を結ぶ必要があります。36協定を結べば、月45時間、年360時間までの残業が認められ、さらに特別条項を結べば、月100時間未満(休日労働含む)、年720時間以内まで認められます。
今回の措置を受けて、厚労省は36協定などを締結するための企業向けの相談窓口を全国に開設するということです。今回は、これまでに公開したコンテンツの中から、残業に関するものをピックアップしてご紹介します。
●始業2時間半前に出社、早出残業代はつくか?〜Y社事件〜(2025年10月21日)
<事案の概要>
本件は鋳造工場で働く従業員(原告)が労災と解雇に関して、会社に損害賠償を求めた事案です。いくつか争点がありますが、ここでは原告がタイムカードの打刻記録に基づき、いわゆる「早出残業」に対する残業代の支払いを求めた点について解説します。
原告はタイムカードの記録を根拠に、始業時刻(午前8時)の2時間半も前である午前5時30分頃から出社し、用具の修理、工場内の塗装、工具棚の製作、書類作成といった業務に従事していたと主張しました 。
●残業が多い部下(2025年1月21日公開)
仕事が忙しくなると、どうしても残業が増えがちです。しかし、残業が常態化している部下がいる場合、その背景にはさまざまな要因が隠れている可能性があります。過重労働を防ぐためには、マネジャーが適切に状況を把握し、効果的に対処することが求められます。今回は、残業が多い部下への対応事例をもとに、問題の根本原因を探る方法と、過重労働を防ぐための配慮ポイントをご紹介します。
<今回の事例>
課長のAさん(40代)は、営業部の管理職として5人の部下を率いています。その中でもBさん(30代)は真面目で責任感が強く、どの案件にも全力で取り組むタイプでたのもしいのですが、残業が多いことがネックです。残業が多いことを指摘すると「大丈夫です」と答えるだけで、問題に感じている様子はなさそうです。
●残業する部下を残して先に帰るのは気が引ける(2019年7月18日公開)
<相談>
自分の部署は、パンフレット類の制作を請け負う仕事なので、どうしても急ぎの依頼を受注した場合、残業が発生してしまい、定時に帰宅することが難しいのが実情です。それでも働き方改革の流れで、なんとか効率化を図り、残業時間の削減に努めてきています。
私も残業削減の旗振り役として、自ら早く帰ることを心掛けようとしているのですが、残業中の部下を残して先に帰るのは、どうしても気が引けてしまいます。だからといって、意味もなく会社に残ることも余計なストレスを感じます。このようなケースでは、どう考えればいいでしょうか?
●文/三宅航太
株式会社アイデム 人と仕事研究所 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。