採用した人に定着してもらう4ポイント
少子高齢化などの影響により、労働市場では人手不足が顕在化し始めています。そうした中、企業は人材確保のため、さまざまな施策を打ち出しています。今回は、その施策の1つである人の定着について、株式会社コーチングバンク代表取締役の原口佳典さんに解説していただきます。
■定着には何が必要なのか?
採用条件は、コネがあること
以前、ある大学の先生のお話をお聴きした際、その先生が面白いことをおっしゃっていました。「人が会社を辞めるときに言う理由は2つに分類される。1つはこのままこの会社に居ても先が見えない、そしてもう1つは先が見えた、である」というお話をされていたのが印象的でした。つまりどちらも理由のように見えて、本当の理由ではないのです。 人の定着をどうするのか、というのは中小企業の経営者並びに人事担当者にとって、悩ましい問題です。今のご時勢、なかなか人を採用するのも難しく、しかし辞めるのは簡単に辞めてしまう。理想的には自社の価値観に合った、辞めない人材を採用するのが一番ですが、大企業ならいざ知らず、なかなかそれも難しいところがあります。
かつてある有名な老舗出版社が採用の条件を「コネがあること」として、業界で少し話題になりました。出版社というのはもともと中小・零細企業が多い業態であり、老舗出版社とはいえ、採用は1名とか2名とか、そのくらいです。わざわざ採用した人材が簡単に辞めてしまわないように、最初からコネのある人材を雇ってしまう、というのは1つ納得できる施策だと感心した覚えがあります。
一番の採用基準は協調性
確かに人を定着させるには、採用時にきちんと自社の価値観・社風に合った人材であるかどうかを見極め、お互いに合意することがとても重要です。この文章を読まれている御社はそんなことはないかと思いますが、特に人を育てる意識の低い会社は、人を「スペック」で判断しがちです。こういう能力を持っているから、こういう人材だから、という理由で採用したとして、果たしてその人が組織に根付くのか。むしろそちらの方が問題です。
ある、人を大事にすることをモットーにしている会社では、一番の採用基準は「協調性」としているそうです。仕事に必要な能力は就職してから身につけさせれば良い。しかし、誰かと一緒にやっていくことができないで、自分のことだけやっていればいいと考える人は、どんなに他の能力が高くても、定着させることは難しいでしょう。
新入社員受け入れ研修
採用で選ぶと言っても、そもそも応募の絶対数が少ない場合には限界があります。そうなると、採用した人材をいかに定着させるか、という風に視点が行くのも無理はありません。こちらも出版業界で、同じく老舗の出版社ですが、数年ぶりに新入社員を迎えるので、先輩社員としてどう振る舞えばいいのかの参考にしたいので、コーチングのやり方を伝授してほしいと言われ、ミニ講義をさせていただいたことがあります。
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●文/原口佳典(はらぐち よしのり)1971年福岡県生まれ。株式会社コーチングバンク代表取締役。早稲田大学第一文学部卒。出版・IT業界を経て、コーチとコーチングを一般に紹介するサービス「コーチングバンク」を開設。講演・研修・セミナーを多数実施。著書に「人の力を引き出すコーチング術」(平凡社新書)、「100のキーワードで学ぶコーチング講座」(創元社)がある。一般社団法人日本支援対話学会代表理事、一般社団法人国際コーチ連盟日本支部理事、日本経営品質賞審査員。http://www.coachingbank.com/
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