人手不足の状況が続く中、新たな人材の確保は企業の最重要課題の1つです。その際のキーワードは、求職者を御社の「ファン」にすることです。
ミュージシャンやアイドルなどの熱狂的なファンは、コンサートがあれば最優先で会場に駆け付けます。限定グッズがあれば、財布の中身にかかわらず、多少無理をしてでも手に入れます。また、例えばSNSで応援投稿をするなど、アーティストが喜ぶ(役立つ)行動を、頼まれてもいないのに自発的にします。
これは、企業の人材確保についても大きなヒントになります。企業のファンになった人が採用され、働き始めると、役立つことが何かを自ら考えて、積極的に動いてくれます。その企業の商品、サービスについて、自分の周りにいる人たちに、よい口コミをしてくれます。接客や販売の業務に携われば、お客様に、思いを込めて商品説明をしてくれます。その熱意が伝わるので売上アップつながります。結果、やりがいを感じて働けるので、定着率も上がります。
入社の決め手は、インターンシップでの社員との関わり
とくに新卒採用については、インターンシップを行う中で、ファンにすることが成功の秘訣です。ある求人関連企業が2025年入社組み(大卒、院卒)に行った調査によると、インターンシップへの参加率は85.7%でした。インターンシップのメリットは、早期に学生と接点が持てること、入社前にミスマッチを防げること、職場の雰囲気を肌感でつかんでもらえるなど複数ありますが、一番は、既存の社員と交流を深め、人柄を分かってもらい、企業と社員のファンになってもらう機会が作れることが一番です。
筆者の息子がこの春にある企業に就職しました。大学3年生になってすぐに複数の企業のインターンシップに参加し、現場で働く人たちと出会う機会を何度も作っていました。結局、就職先として決めた企業は、インターンシップで話をした社員の方々が、自分と相性がよかったこと、企業の取り組んでいることや社長の考えに深く共感できたこと、そして、インターンシップを通じて、企業と社員方々の熱烈なファンになり、「この企業で、この人たちと一緒に働きたい!」と思えたことが決め手だったと話していました。
老舗米穀販売店のインターンシップ
神戸の老舗米穀販売店では、数年前から中途採用と並行して新卒採用に取り組み始め、ここ数年はインターンシップに力を注いでいます。一般的なインターンシップは、ワークショップを行ったり、職場で実際に業務を体験したりして、学生の言動を観察し選別することを目的に行います。
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●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
https://okamotofumihiro.com/