スタッフ一人一人をねぎらうオーナー夫婦
繁忙期を終えた後に上司が「どのような言動をとるのか」で、その後のスタッフのモチベーションは上がりも下がりもします。ひと山超えたという状況で心身ともに疲弊しているとき、感謝やねぎらいのメッセージを投げかけられ、疲れが吹き飛んだ経験がある方も多いかと思います。心理学者・行動経済学者のダニエル・カーネマン氏によって提唱された『ピーク・エンドの法則』によれば、人は最も感情が動いたとき(ピーク)と、最後の印象(エンド)だけで全体的な印象が決定されるとのこと。経験したことは、終わり方次第でよい記憶にも、つらい記憶にも変わるということです。
大阪の和食居酒屋では、年間最大の繁忙期である年末年始の営業が終わった後に、必ず経営者夫妻がスタッフに「ねぎらい」の気持ちを伝える機会を設けています。店主から一人一人、感謝の言葉を伝え、メッセージカードに感謝の言葉を記入して手渡していきます。それに加えて、ちょっとしたお礼として、「寒い日が続くのでお風呂で体を温めてね!」という意味を込めて、バスボムやバスソルトなどの入浴剤やお菓子などをプレゼントしています。オーナー夫妻からの気持ちを受け取ることで、心身の疲れが癒やされ、次も頑張ろうという気持ちになったとスタッフからお聞きしました。
仕事へのモチベーションが最も上がる瞬間
過去に、23〜29歳までの正社員2,000人を対象に行ったWebアンケート調査(マイナビ転職)によると「仕事へのモチベーションが最も上がる瞬間は?」の質問で、「誰かに褒められたとき」「感謝されたとき」の回答が1位と2位でした。「仕事へのモチベーションを最も上げてくれる人は誰ですか?」については「上司」が1位という結果でした。このデータから、上司の言葉がけの影響力が「どれほど大きいのか」がご理解いただけるかと思います。
頑張ったスタッフへのねぎらいとして、高額なインセンティブを支払う場合もあります。もちろん経済的なメリットがあるので、受け取ればうれしいし、やる気も高まります。ただ、金銭的な報酬の場合は、その後もモチベーションを保つには、手に入った金額と同等か、より高額な報酬を受け取らないと、やる気が低下してしまいます。そういうことを継続できるのは、一部の高収益企業に限られてしまいます。
私がかつてセブンイレブンのFC店を経営していたときは、年末と正月の出勤者には、ねぎらいの言葉がけとともに、アイスクリームをプレゼントしていました。私が知る企業では、予算が達成した日や月末に大入り袋などを配布しているケースもあります。中身は500円硬貨しか入っていなかったとしても、経営者やリーダーの気持ちが伝わるのでうれしいものです。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
https://okamotofumihiro.com/