就活「後ろ倒し」の目的は達成できたのか?
パートタイマー白書や学生を対象にした就職活動に関する意識調査など、当研究所が独自で行っている調査から見えてくることを考察します。
11月9日、日本経済団体連合会の榊原会長は記者会見で、2017年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした採用選考活動のスケジュールを変更する方針を検討していることを明らかにしました。現行は選考活動解禁が卒業年次の8月1日であるのに対し、来年からは2ヶ月前倒しして、卒業年次の6月からとすることが検討されています。採用選考活動のスケジュールは、2016年3月卒業予定の学生を対象とした、今年に変更があったばかりです。
2016年卒業予定の学生を対象とした大卒・院卒の採用選考活動のスケジュールは、企業の広報活動開始を「卒業・終了年度に入る直前の3月1日以降」に、選考活動を「卒業・終了年度の8月1日以降」にそれぞれ後ろ倒しするよう、経団連の「採用選考に関する指針(2014年9月16日改定)」で求められていました。これは、安倍首相からあった就職・採用活動開始時期の変更要請の理由のひとつに「学修時間の確保」があり、これを実現することで学生が落ち着いて学業等に専念できる環境を整備するためでした。
しかしながら、上記スケジュールを加味せず採用選考活動を行った企業は少なくありませんでした。計画通りに新卒の確保ができないことを恐れた企業では、選考活動を早くから行い、その結果従来よりも採用期間が長期化することになりました。さらに、大手企業の選考が8月に本格化したため、夏の暑い時期に就職活動を強いられた学生が多くいました。その他にも、内定辞退数の増加や、学生を囲い込むための「おわハラ」等が問題となっています。
ところで、スケジュールの変更は学生が「学修時間の確保」を実現するために行われましたが、今回の「後ろ倒し」によって、学生の学業に費やす時間は増えたのでしょうか。経団連の指針の中には「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始を自粛する」と記されてありますが、当初の想定された流れと合わない部分が多く確認されていることから、やはり本来の目的も達成できていないのでしょうか。
スケジュールの変更前の学生(2015年卒)と変更後の学生(2016年卒)との間に、学業に費やす時間について差があるのかどうか、人と仕事研究所で公表している就職活動に関する調査で比べてみました。
2015年3月卒業予定者の就職活動に関する調査(2014年10月1日状況)では、学生に1日の活動時間を聞き、その平均の推移を記載しています。これによると、「2月末」から「学業・サークル・アルバイトに費やす時間」は徐々に増えていますが、「就職活動時間」は徐々に減っています。この2つの項目は、反比例しているようです。
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●文/関 夏海(せき なつみ)2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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