報告書やメール、SNSでの発信など、ビジネスは文章を書く機会にあふれています。さまざまな目的に合わせて、伝わる文章を書くために必要なことを解説します。(2024年10月1日)
文章が読みやすくても、内容がわかりにくければ意味がありません。わかりやすい内容にするポイントは(1)必要な情報が盛り込まれているか?、(2)正確に書かれているか?、(3)表現はわかりやすいか?、の3つです。前回は(1)(2)について述べました。今回から(3)について、複数回にわたって解説していきます。わかりやすい表現にするには、さまざまなテクニックがあります。
・一文の適切な長さは?
長い文は、わかりにくさを生む大きな要因の1つです。複雑な構造になりがちなので意味をくみ取りづらく、読み返さないと理解できないこともあるかもしれません。
一文の長さは、40〜60字あたりが読みやすいとされています。すべての文を40〜60字にするということではなく、文章全体の平均として捉えていただければと思います(内容によっては長い文になってしまうこともありますし、長くても意味が通じれば問題ありません)。長い文になるときは句点や接続詞を使ってわかりやすくしたり、複数の文に分けたりするようにしましょう。
また、一文の適切な長さは、見え方によっても変わります。例えば、パソコンとスマホでは見え方がまったく違います。スマホで見られることが多いなら、実際にスマホで検証するとよいでしょう。
・一文に情報を詰め込まない
正確に伝えようとして、一文にたくさんの情報を入れると文が長くなります。ですが、先述したように長い文はわかりにくくなりがちです。一文に込める情報は、1つにするのが基本です(一文一義もしくは一文一意といいます)。
下記の例文は100字以上あり、一文に4つの情報が含まれています(ミーティングの日時、議題、進め方、提案)。これを切り分けると、改善例のようになります。長い文を短くするときは、箇条書きをイメージするとよいでしょう。
<例文>
5月10日の午前9時に設定した新商品販売プロジェクトのミーティングですが、議題はSNSでの販促プロモーションについてで、アイデアを考えておいてもらったほうがスムーズに進むと思うので、事前に参加メンバーに議題を共有します。
<改善例>
5月10日の午前9時に設定した新商品販売プロジェクトのミーティングの件です。議題は、SNSでの販促プロモーションについてです。アイデアを考えておいてもらったほうがスムーズに進むと思うので、事前に参加メンバーに議題を共有します。
・改行、余白、見出しでわかりやすくする
文章量が多いときは、内容が頭に入りやすいにように改行したり、余白(スペース)を入れたりするようにしましょう。人の話を一方的に聞かされていると、うんざりしたり、退屈したりすることはありませんか。文章もそれと同じで、延々と続く文章は読みにくく、息苦しさを感じさせます。
改行や余白を入れる目安は、5〜6行に1回です(内容や見え方によって変わるので、目安として捉えてください)。内容や時間の流れが変わるところに入れるようにします(内容が変わらなくても、長い文章が続いていたら入れましょう)。
読み手の頭に入りやすくするために、内容ごとに見出しをつけるのも効果的です。見出しは長すぎず、内容を簡潔に表す言葉を選ぶとよいでしょう。大事なところを太字にしたり、強調したいことに下線を引いたりする方法もあります。文章にメリハリがついて、理解しやすくなります。
また、一文の中で複数の情報を列挙するときは箇条書きにしたり、別立てで分けたりするとわかりやすくなります。
<例文>
労働基準法の賃金の支払いに関する原則として、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月払いの原則、一定期日払いの原則の5つがあります。
<改善例>
労働基準法の賃金の支払いに関する原則は、次の5つです。
・賃金支払いの5原則:通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月払いの原則、一定期日払いの原則
●文/三宅航太
株式会社アイデム東日本事業本部 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。