報告書やメール、SNSでの発信など、ビジネスは文章を書く機会にあふれています。さまざまな目的に合わせて、伝わる文章を書くために必要なことを解説します。(2024年12月24日)
わかりやすい文章にするには、適切な表現を選ぶ必要があります。今回は使わないほうがいいものや、使うときに注意しておきたいものについて解説します。
同じ意味の言葉を重ねて使わない
同じ意味の言葉が重なっていると、くどかったり、わかりにくかったり、誤解をまねきやすかったりします。読み手に稚拙な印象を与えるので、意味を1つにしたり、言い回しを変えたりしましょう。
<例1:二重表現>
・まず一番最初にやることは→まずやることは、最初にやることは
・約40%くらい→約40%、40%くらい
・必ずしも必要ありません→必要ありません
<例2:二重否定>
・約束をした時間に間に合わないこともない(〜ない〜ない)
→約束をした時間に間に合う、約束をした時間に間に合うかどうかわからない
・本セミナーは事前に申し込まないと参加できません
→本セミナーに参加するには、事前の申し込みが必要です
<例3:二重敬語>
・部長がお戻りになられたら(「お(動作)〜なる」+「〜られる」)
→部長がお戻りになったら
・社長がおっしゃられていました(「お(動作)〜なる」+「〜られて」)
→社長がおっしゃいました
「い」抜き・「ら」抜き言葉は使わない
会話で「い」抜き言葉や「ら」抜き言葉は日常的に使われていると思いますが、くだけた口語表現です。文法的には間違っているので、文章では使わないようにしましょう。細かいところですが、使わないことで文章の質を上げることができます。
<例4:「い」抜き言葉>
・思ってます→思っています
・対応してます→対応しています
・いつもお世話になってます→いつもお世話になっています
<例5:「ら」抜き言葉>
・出れる→出られる
・決めれない→決められない
・本社まで来れますか→本社まで来られますか
難しい表現をさける
想定している読み手や内容にもよりますが、文章を書くときは難しい表現やかたい言い回しはさけたほうがよいでしょう。とくに多くの人に伝えたいときは、なおさらです。文章を読むのが苦にならない人もいれば、苦手な人もいます。
また、専門用語やカタカナ語は解説を加えたり、定義が必要な言葉は説明したりするようにしましょう。知っている人は問題ありませんが、知らない人は途中で読むのをやめてしまうかもしれません。読み手が困らないようにしましょう。
<例6:表現の言い換え>
・安堵する→安心する、ほっとする ・庇護する→かばう、守る ・誤謬→誤り
・凌駕する→しのぐ、上回る ・脆弱な→弱い、もろい ・漏洩する→漏らす
<例7:用語解説>
・法制化の主旨は非正規の待遇改善なので、正規の賃金引き下げは不利益変更(※)にあたる恐れがあります。
※現に定められている労働条件の切り下げを指す。企業は、労働者の同意を得ずに労働条件を不利益に変更することはできない。経営上の必要性が大きく、労働者の不利益が大きくない場合は、認められることもある
・近年、アルムナイネットワーク(退職者たちのコミュニティー)をつくり、退職者との関係づくりに取り組む企業が増えています。
文末表現の選び方
文末表現とは、文の終わり方のことです。日本語は文を締めくくる表現によって、読み手に与える印象が変わります。表現は2つあり、「〜です・〜ます」(以下「ですます調」)と「〜である・〜だ」(以下「である調」)があります。想定する読み手や内容などによって使い分けましょう(本連載は「ですます調」で書いています)。
・ですます調/読み手に丁寧で、柔らかい印象を与えます
【使用例】メール・SNSでのやりとり、顧客への配信メールや説明書など
・である調/断定形なので、読み手に堅い印象を与えます
【使用例】レポートや報告書など
文章の中で「ですます調」と「である調」が混在していると、読み手に散漫な印象を与えるので、どちらかに統一しましょう。ただし、引用や箇条書きの記述が異なる文末表現になるのはかまいません(箇条書きは簡潔に示すものなので、「である調」が一般的)。
<例8>
離職理由は仕事内容、職場環境、労働条件に分類でき、いずれかの不満に起因しています。
・仕事内容:入社前に聞いていた仕事と違う、与えられた仕事に興味が持てない…など
・職場環境:希望の部署に配属されなかった、上司が高圧的な態度をとる…など
・労働条件:入社前に聞いていた条件と違う、残業が多い…など
●文/三宅航太
株式会社アイデム東日本事業本部 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。