クレーム対応で、お客様からの要求が過大であることはよくあります。特にこちらに非がないような場合は「カスハラ客だ」と決めつけて、一方的に断ることに終始する企業が少なくありません。
リフォーム会社での事例をご紹介します。お風呂のリフォーム工事を3カ月前に施工したお客様から「床が黒ずんできたが、不良工事だったのではないか?」というクレームが入りました。当然、3カ月も使用すると定期的に清掃をしてもらわないとそのような状態になるのは常識だと考えますが、このお客様の要求は「無料で床を貼り直ししてほしい」でした。
できることを探すことは怠らない
これはかなりの過大要求であり、受け入れることはできません。この場合での対応の考え方としては、「誠に恐れ入ります。残念ながらお客様のご要望に添えることができません。誠に申し訳ございません」と断る方法はありますが、プロとして「お客様のために何かできるのではないか?」と考える機会として捉えることもできます。
例えば、「不良工事ではないか?」というお客様の不安を取り除くために、現場を見に行くことはできると思います。その上で、不良工事ではなかった場合、「不良工事ではありませんでした」と、こちらの正当性を主張するだけでなく、床の黒ずみを簡単に取り除ける洗剤や掃除の仕方を、お客様に情報提供することはできるのではないでしょうか。
このリフォーム会社は工事を受注することより、工事終了後のクレーム対応含めたアフターフォローに多くの力を注いでいます。実際に「できない」と伝えるだけでなく、できることを一生懸命探し、提案することで信頼を勝ち得て、追加工事の依頼や新規の仕事を紹介してもらえることも少なくないようです。過大要求と思うようなクレームでも、「尽力する」「支援する」気持ちで対応することは忘れないようにしてください。
「金返せ!」と言われたときの判断基準
クレーム対応研修に呼ばれると、“返金要求”に対しての質問が多くあります。「商品が壊れていた」「Webに書いてある内容と違う」「商品が気に入らない」「思っていたのと違った」と言われた場合、返金は「どうすればいいか」というものです。結論から言うと、「契約通りかどうか?」を判断基準にしたらよいと思います。約束したサービスを「提供できたかどうか?」で返金の判断をすればよいのです。
●文/谷厚志(たに あつし)
“怒りを笑いに変える”クレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。
学生時代より関西を拠点にタレントとして活動。芸能界を引退後、会社員としてコールセンターやお客さま相談室のクレーム対応責任者を歴任。2,000件以上のクレーム対応に接し、クレーム客をファンに変える独自の対話術を確立する。2011年、クレーム対応のコンサルティング会社を立ち上げて独立。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修に登壇する。著書に『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)など。フジテレビ「ホンマでっか?TV」、日本テレビ「ZIP!」など、メディア出演多数。
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