医療従事者は職業柄、高いストレスを抱えています。そのため、医療現場では積極的に心の健康を保つ取り組みを行っています。医療現場のメンタルケアを解説します。(2026年2月10日)
同じ職場で働いていても、新人とベテランでは感じているストレスの「質」は大きく異なります。今回は「新人とベテラン」それぞれが感じるストレスに目を向けます。医療現場に限らず、すべてのビジネスパーソンに共通する課題と、心を守るための具体的なヒントをお伝えします。
新人とベテランのストレスの違い
新人は、場所・人・環境・仕事の進め方・専門用語など、すべてが初めてです。1日の業務を終えるだけで精いっぱいになることも少なくありません。そんな中での、上司や先輩の何気ないため息や「前にも言ったよね」といった言動は圧力になることがあります。これは、仕事に慣れる過程で新人に多く見られる「重圧型ストレス」です。新人には、重圧を軽減するような言動が有効です。例えば、「何のためにこの確認をするのか?」など、目的を前向きな態度で伝えるとストレスよりも必要性が感じられます。
一方、ベテランはどうでしょうか。業務には慣れ、「任せて安心」「できて当たり前」と思われがちです。新人に多いのが「重圧型ストレス」だとすれば、ベテランに多いのは「抱え込み型ストレス」だと言えるでしょう。「自分がやった方が早い」「ここで断ったら現場が回らない」「任されている以上、応えなければ」そんな思いから、仕事や人のフォローも、気づけばすべて自分の中で抱え込んでしまいます。
転職してきたデキル看護師の悩み
私が病棟で働いていたときのことです。仕事も的確で気配りがある。患者さんや同僚からの信頼も厚い、いわゆる「できる看護師さん」が、ある日浮かない表情をしていました。「何かありましたか?」と声をかけると、彼女は少し間を置いてから「実は…辞めようと思っているんです」と話してくれました。彼女は家庭とのバランスを考え、定時で帰れる病院を選んで転職してきました。最初は、その選択はうまくいっていると感じていたそうです。
しかし人手不足が続く中、「経験があるから」「任せられるから」という理由で、新人指導やフォローの役割が次々と彼女に集中していきました。連日の残業、自分の仕事を完璧にこなすのは当然で、そのうえで新人や後輩の教育も担う。しかも彼女は管理職ではなく「先輩」という立場です。指導の責任はあるのに、明確な権限も、報酬の違いもない。評価につながるかも分からない。さらに年齢を重ね、若い頃のように無理もきかなくなってきた。体力の回復に時間がかかり、疲れが翌日に残る。それでも「自分が踏ん張らなければ」と無理を重ねていました。
ベテランのストレスは見えにくい
新人には「大丈夫?」と声がかかることがあっても、ベテランに「最近どう?」「無理していませんか?」と声をかけられることは、ほとんどありません。新人のストレスが「外からの重圧」だとしたら、ベテランのストレスは「内に積み重なる負荷」。見えにくいからこそ、より注意が必要なSOSです。
ベテランに対して声をかけることに、「言ったら失礼ではないか?」「余計なお世話だと思われないか?」そんな遠慮が働くこともあるかもしれません。けれど、何も言わないことは孤立を深め、重大なストレスになってしまうことがあると私は考えます。大切なのは、「お手伝いできることはありますか?」と、仲間として孤独にさせない声かけです。「気にかけてもらえている」「1人で抱えなくていい」と感じられます。ベテランは「大丈夫?」と聞かれる機会が少ないからこそ、この一言が心の支えになることも少なくありません。
●文/吉村園子(よしむら そのこ)
株式会社Tree代表取締役、心理学の学校Tree代表理事、上級心理カウンセラー、行動心理士、米国NLP協会認定NLPプラクティショナー
独自のカウンセリングメソッドを活かし、「上からでも下からでもなく、横からそっと心に寄り添う」をモットーに活動を行っている。心理学セミナーやグループコンサルを年間200回以上実施、個別のカウンセリングやコンサルティングは延べ3000人以上を数える。著書に『一瞬で気持ちを切り替える脳内ひとりごと』(三笠書房)、『40年間おデブだった私がリバウンドなくスッキリ-13kgやせた!!マインドフルネスダイエット』(主婦の友社)。