伊藤ハム株式会社/社員の心に火をつける! メンター制度で、若手戦力化と組織強化を実現
日本の代表的な食肉加工メーカーである伊藤ハム株式会社が、グループ独自で展開する「メンター制度」。その中身と導入の経緯を紹介します。(取材・文/水崎真智子)
大卒新入社員の約3人に1人が入社3年以内に離職すると言われて久しい。厚生労働省の調べによると、2010年3月に大学を卒業した人の卒業後3年以内の離職率は31.0%。1年以内の離職率は12.5%となっており、3年以内に離職する人のうち1年以内に離職する人が多いという。
今回、制度探訪では新入社員教育に注目し、育成はもちろんのこと、離職につながる心理的負荷の軽減にも配慮した伊藤ハムグループの「メンター制度」について紹介する。
新人の成長の差は、上司の意識の差
同グループがメンター制度を導入したのは2012年春。先立つこと半年前、2011年に入社した新入社員のフォロー研修で、人材開発室の位田明子さんが目にしたのは、わずか4カ月ほどで社員の間に意欲、能力ともに大きな差ができていたことだった。
原因を調査すると、新入社員個人の資質よりも配属された組織の受け入れ態勢の差、つまり上司の意識の違いによるものと思われた。位田さんは言う。
「新人を伸ばしていこうと自覚して準備をする上司と、新人とは先輩の背中を見て育っていくものと考える上司がいます。もし、前者ばかりになれば、新人はもちろん組織が強くなると確信しました」
位田さんは常々、若手の戦力化と組織の強化を喫緊の課題として認識していた。
「伊藤ハムグループの5年後、10年後を考えたとき、団塊世代の退職や早期退職などにより社員の構造が大きく変化することが分かっています。若手の強化は不可欠なのです」
管理本部人事総務部 人材開発室 位田明子さん
制度のゴールは組織強化
新人育成に特化したメンター制度は、会社によってはブラザー・シスター制度、新人指導者制度などの名称で呼ぶこともある。同グループのメンター制度は、新人の指導だけにとどまらない仕組みとなっている。制度のゴールは組織強化だ。
「若手先輩社員のメンターが、上司の支援のもと、職場のメンバーを巻き込んで新人を支援していきます」
制度は、位田さんが中心となって人材開発室が立ち上げ、約半年の準備期間を経てスタートした。一般的な指導制度であれば、メンターはOJTで業務を教えたり、業務上の悩みを解決するパートナーという役割になる。だが、同グループにおけるメンターの役割はプロデューサーだという。新人を迎える4月、配属先部署の上司(=マネジャー)が、入社3年目から30歳未満の若手社員の中からメンターを選出する。メンターと上司とで、「1年後このような人材に育てたい」という育成指導計画書を作成。項目別に具体的な目標を掲げる。
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●伊藤ハム株式会社
本社/兵庫県西宮市高畑町4-27
創業/1928年4月
資本金/284億2,754万円
従業員数/1,899人
事業内容/食肉加工品の製造および販売、食肉の加工および販売、調理加工食品・惣菜類の製造及および販売
ホームページ/ http://www.itoham.co.jp
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