株式会社コミニケ出版/朝礼で、社員一人一人の品性を高める
企業の朝礼をサポートする月刊誌がある。その名は「月刊朝礼」。創刊して30年以上続く息の長い出版物だ。発行元である出版社でも朝礼を実践している。(取材・文/水崎真智子)
朝礼は歯磨きに似ている
企業の朝礼をサポートする月刊誌「月刊朝礼」には、1ページに1話、ゆっくりと音読しても1、2分ほどの短い話がその月の日にち分掲載されている。朝礼で毎日1話、当番が読み上げ、感想を言い合うなどして活用する。 発行元の株式会社コミニケ出版の社長である下井謙政さんは、「朝礼は社員を1つにし、品性を高めます」と効用を語る。
組織改革に即効性がある技術やテクニックと比べると、朝礼の効果は見え難い。すぐに結果を求める時代の風潮がある中、下井社長は朝礼を歯磨きになぞらえる。やらなくても誰にも怒られないが、3日もしないと気持ち悪い。半年、1年すると虫歯や歯槽膿漏といったトラブルの出現に差が出る。朝礼を歯磨きだとすると「月刊朝礼」は歯ブラシと歯磨き粉であり、下井社長は最高の歯ブラシと歯磨き粉を目指しているという。
「月刊朝礼」の誌面。文字が大きく、ルビが振られ、読みやすい
創刊の背景
社会人の道徳の教科書とも言うべき「月刊朝礼」は、どうやって生まれたのだろうか。従業員の心を養うツールであればこそ、その成り立ち、背景にあるものに注目したい。 創刊したのは、現社長の祖父にあたる下井勲さんだ。1959年、経済紙の記者だった下井さんは「大阪編集工房」を立ち上げて独立。広告物の編集制作を始めた。1973年には社名を「株式会社コミニケ」に変更。大阪を代表する広告・編集プロダクションに育てた。
60歳を目前にする頃、長年経営に携わってきた体験から社員教育の重要性に気づき、社内に教育事業部を開設。講演で全国を回る中、効果的に社員教育を行えるツールがあれば便利だと考えて作ったのが「月刊朝礼」だ。60歳を節目に「株式会社コミニケ出版」を設立。「月刊朝礼」を発行し、新たな思いで第二の人生を歩み始めたという。
しかし創業社長の下井勲さんがこの事業に打ち込めたのはわずか2年。62歳で早すぎる死が訪れた。以降、妻が経営を引き継ぎ「月刊朝礼」を発行。しかし、2006年5月、79歳になった2代目は、病床に孫たちを呼んだ。後継者を決めるためだ。
3代目社長は元板前
孫の1人、現社長の下井謙政さんは、当時、料理の世界にいた。親の反対を押し切って好きな道に進み10年。勤務先の料理店で料理長も経験し、次は自分の店をと独立目前だった。そんな経緯をすべて知っていた祖母から3代目を託され、考えた末に受け入れた。 2006年7月、高卒の元板前が、出版社の3代目社長に就任。しかし、新社長の居場所は会社にはなかった。
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●株式会社コミニケ出版所在地/大阪市西区南堀江3-3-3設立/1984年3月8日従業員数/10人(パートアルバイト含む)事業内容/「月刊朝礼」の企画・編集・制作。単行本、ムック、CDなどの企画・編集・制作などホームページ/ http://www.kominike-pub.co.jp
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